企業城下町が「撤退案」に揺れた。シャープの経営再建計画案に栃木工場(矢板市早川町)の閉鎖が盛り込まれたことが明らかになった16日、従業員は「間違いであってほしい」と当惑し、市民は「矢板はどうなるのか」と動揺した。シャープと共に50年近く歩んできた同市。3年前に従業員の4分の1が早期退職する事業規模縮小を経験したが、落ち着きを取り戻しつつあっただけに、関係者は驚きや不安の表情を浮かべた。

 午後5時すぎ、シャープ栃木工場では仕事を終えた従業員たちが次々と門を出て帰路へ就いた。

 「会社から説明はなく、(工場閉鎖の)報道が本当かどうか分からない」。男性(56)は戸惑いながら「以前もいろいろ報道されたが『矢板』と名前が出るのは初めてで、ショックだ」と漏らした。

 30年以上勤務する男性(52)は「3年前に希望退職を募った後は、リストラのようなことは全くない」と困惑。テレビ事業に携わる男性(53)は「報道が間違いであってほしい。矢板はテレビでやっていくしかない」と言葉少なだった。

 ▽「受け皿」を懸念

 矢板市役所には午後4時ごろ、再建計画案を報じるニュースの一報が入った。しかしシャープからの情報はほとんどなく、担当者は「計画が正式に発表されるまで待つしかないのか」と厳しい表情。

 一方、市商工会関係者は「閉鎖が現実になったら、地域に雇用の受け皿が十分あるかどうか…」と懸念を口にした。

 「シャープ城下町への打撃は大きい」。市内のタクシー会社経営者(66)は驚きを隠さない。「地元企業や商店はシャープ関係で潤っている。市の財政にも影響があるのでは。矢板は何で生きていけばいいのか」。JR矢板駅前のホテル経営者(54)は「再建策でシビアな判断がされると覚悟していたが、商売に影響は大きい」と声を落とした。

 ▽「残ってほしい」

 「矢板と言えばシャープ。すごくショックだし、信じたくない」。60代の主婦は「このままでは街全体が駄目になる」と、表情を曇らせる。パート従業員女性(47)は「人員削減のうわさは耳にしたが、まさか撤退するかもしれないなんて」。地元企業に貢献しようと、テレビはいつもシャープ製品だった。「なんとかこのまま残ってほしい」

 矢板駅近くで飲食店を経営する男性(64)は「しょうがないよね」と諦め顔。「30年前はシャープ社員の宴会が盆暮れ正月はひっきりなしだった。今は本当に少なくなった」と嘆いた。