大手企業が横並びで実施してきた採用活動が転換期を迎えた。大学側は現在のルール維持を主張する一方、経団連は現行指針の廃止を早々に決定。10月に新設する会議で指針に代わる新たなルール作りの議論が始まるが、守られずに有名無実化する恐れがある。学生には戸惑いが広がった。

採用ルールはこれまでも繰り返し変更されてきた。2015年卒は会社説明会が大学3年生の12月開始、面接は4月以降だった。16年卒になると説明会は3年生の3月、面接は4年生の8月になった。学業を優先させようと安倍政権が働き掛けたためだが、採用活動を早める企業が後を絶たず、17年卒以降は説明会を3年生の3月、面接を4年生の6月から始める現行の日程となった。

 大学の関連団体などで構成する「就職問題懇談会」座長の山口宏樹(やまぐち・ひろき)・埼玉大学長は「経団連の指針が就活の早期化・長期化に歯止めをかけてきたのは事実」と指摘。大企業に比べて採用活動で苦戦を強いられる中小企業を代表する日本商工会議所の三村明夫(みむら・あきお)会頭も「なんらかのルール」が必要との立場で、経団連への反対は根強い。

 混乱を恐れた政府は、21年卒の学生について現行日程を維持する方向で調整。経済界と大学側も受け入れる見通しだ。

 近畿大(大阪府)のキャリアセンターの担当者は「(ルール廃止で)通年採用が主流になると就職支援も手探りで進めなくてはならない。現行日程の維持を歓迎したい」と評価した。

 ただ21年卒の就職活動は東京五輪・パラリンピックの日程の影響も受ける。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子(ひらの・けいこ)主任研究員は「6月の面接解禁と学生ボランティアの準備期間が重なる。五輪を理由に抜け駆けする企業が現れるかもしれず、新しい枠組みは最初からつまずく危険性がある」と指摘した。

 経団連に加盟しない外資系企業は自由に採用活動をしており、ソフトバンクグループやカジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなどは既に、欧米では一般的な通年採用に移行した。

 学生の「青田買い」を防ぐために1953年に始まった就職協定は、現在は経団連の指針となっている。海外で事業展開する企業を中心に「時代に合わない」との声は強まる一方だ。優秀な人材を獲得するために採用活動を工夫する流れは止められそうにない。政府と経済界、大学が足並みをそろえて新たなルールを決めても、翻弄(ほんろう)され続けてきた学生は安心できない。