政府は3月の月例経済報告で、国内景気は「厳しい状況」との認識に転じた。かたくなに守り通した「回復」の文言はついに消え、アベノミクスの成果として誇った「戦後最長」の景気拡大に終止符が打たれた。新型コロナウイルス感染拡大とともに、日本経済は出口の見えないトンネルに迷い込んだ。

 「落下の角度は東日本大震災級、水準はリーマン・ショック級。両方足したくらい景気は悪くなる可能性がある」。26日公表の月例報告を取りまとめた内閣府の堤雅彦(つつみ・まさひこ)参事官は、衝撃的な見通しを示した。

■雇用変調

 政府の景気認識は誤算の連続だった。新型コロナはアジアが中心で、数カ月程度で終息に向かうとの想定から、2月の月例報告では「景気は緩やかに回復している」との見方を維持していた。民間エコノミストの間では、政府が「戦後最長」と暫定的に宣言した19年1月の時点で、米中貿易摩擦の影響により後退局面に入っていたとの見方が有力だ。

 それでも政府は、低い失業率や賃金上昇を理由に「回復」判断を変えなかった。「回復」の評価を取り下げれば、アベノミクスに傷がつきかねないとの思惑が働いた。

 だが、頼みの雇用にも不安は着実に忍び寄る。内閣府がハローワークの求人数を分析したところ、19年12月の前年同月比3・2%減から、20年2月は12・4%減、3月には16・1%減とマイナス幅が急拡大していた。

 内閣府幹部は「3月の月例報告で『回復』を残すことも議論したが、欧米への感染拡大と雇用の変調で完全に道が断たれた」と明かした。

■不透明感

 政府は昨年12月の緊急対策から数えて「第3弾」となる経済対策を来月取りまとめる。08年のリーマン・ショック後に実施した総事業費約56兆8千億円の超大型経済対策を上回る財政支出で「V字回復」(安倍晋三首相)を図りたい考えだ。

 19年10~12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は消費税増税や台風被害により、前期比年率7・1%減と大幅な落ち込みを記録した。今年1~3月期も2四半期連続のマイナス成長が確実視される。

 首相周辺は「原因がコロナとはっきりしている以上、1~3月期はどれだけ落ち込んでも仕方がない」と予防線を張る。しかし感染拡大を封じ込めない限り、消費刺激策も打ちようがなく、回復シナリオには不透明感がつきまとう。

 今後の焦点は、実体経済の悪化が不良債権の増加などを通じて金融面に波及する展開を防げるかどうかだ。地方経済の衰退や日銀のマイナス金利政策のあおりで体力が落ちている一部の地方金融機関を危機が襲えば、取引先企業の倒産や大量失業を含む深刻な事態へと発展しかねない。