経団連が企業の採用日程を定めた指針の廃止を決め、日本特有の慣行として根付く「新卒一括採用」の在り方に一石を投じた。世界では国境を越えた人材争奪が当たり前で、日本のルールに縛られていては太刀打ちできなくなるという危機意識が強い。政府を交えた今後の議論では、学生らの戸惑いをよそに、雇用形態の根本的な見直しに発展する可能性がある。

 約1カ月前、中西宏明(なかにし・ひろあき)会長が突如打ち出した就活ルール廃止方針は、経団連加盟の大企業トップが居並ぶ9日の会長・副会長会議ですんなり了承された。「終身雇用制や一括採用を中心にした企業の採用は成り立たなくなっている」。日立製作所で国際競争にもまれてきた中西氏の問題提起は、採用面接の解禁日など単なる就活ルールの見直しにとどまらない。

 大学などの新卒者を毎年4月に一括採用する方式は、戦後日本の経済成長を支えたシステムとして国民から一定の支持を得てきた。これと異なり欧米では、学生がいつでも企業に応募でき入社日も柔軟な「通年採用」が一般的だ。

■インドから続々

 日本でも、新卒一括採用と表裏一体の関係にある終身雇用や年功序列型賃金が崩れ始め、産業界では「将来的に通年採用に移行すべきだ」(経済同友会の小林喜光(こばやしよしみつ)代表幹事)と見直し機運が高まっていた。働き方改革や人手不足の克服を経済成長の鍵とみる安倍政権も、あうんの呼吸で動きだす。新たな就活ルールづくりと並行し、成長戦略を担う未来投資会議を舞台に一括採用の見直しを議論していくことになった。

 日本でも、しがらみに縛られない新興企業を中心に通年採用の導入が始まっている。楽天は「国内で確保できる技術者のパイは限られている」(広報部)として、海外の技術系の学生を対象に3年前から通年採用に踏み切った。既にインドや中国を中心とした海外出身者が新卒採用技術者の8割に達している。

 フリーマーケットアプリを運営するメルカリも、学生からの応募を受け付ける「採用サイト」を通年で開き、入社式を年2回実施している。今年は10月入社が50人と、4月から倍増した。知名度アップを狙って技術系学生向けのイベントをインドで開催した効果もあって応募が続々と集まり、うち44人はインドなど海外の学生が占めた。

■広がる戸惑い

 大学関係者には、経団連の動きに戸惑いが広がる。就職活動を支援する名古屋大のキャリアサポート室の担当者は「通年採用を実施している企業はまだ少ない。形骸化しているとは言え、指針は一定の歯止めにはなっている」と指摘した。龍谷大(京都市)の担当者も「ルールがなくなると、いつから就活を始めていいか分からず学生に混乱が生じる。就活日程をにらみながら留学期間を決める人も多く、大学生活に広く影響が出る」と不安を口にする。

 映像関係の仕事に就きたいと考えている東洋大2年の男子学生(20)は「通年採用するような大企業は就職先として考えていない。現行のように日程の目安があった方が開始に備えて準備ができるため学業とのめりはりが利く」と話した。