湯澤トヨさん

湯澤トヨさん

 宇都宮空襲当時、宇都宮市材木町に住んでいた湯澤(ゆざわ)トヨさん(89)=栃木市=からの投稿です。

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 空襲翌日の1945年7月13日の記憶です。その日は、避難していた鹿沼方面の親類宅から、火の手を逃れた宇都宮の自宅に戻っていました。

 夕方、近所の人たちが「今夜も心配なので、田舎へ避難します」と何人もあいさつに来ました。私たち家族は家に残る心積もりでしたが、近所が空っぽになりそうなので、やはり13日も同じ親類宅に身を寄せることにしました。

 前夜には大勢の人が怒号や泣き声とともに押し寄せた道を再び歩きました。同じ道なのに、13日の晩は周りに誰もおらず、静かでした。私たち家族は手をつないで歩いて行きました。

 新川を過ぎ、軍道を通って田んぼ道に出ると、そこはカエルの大合唱が響き、無数のホタルが飛び交う別世界でした。

 当時は人手不足で田んぼの管理がしきれておらず、川草なども生えていました。だからホタルもすみやすかったのでしょう。

 生まれて初めて見たホタルの大群に、美しさとともに異様さを感じました。死んだ兵隊さんの魂が飛んでいるように思えたのです。今でもあの光景は忘れられません。