2019年のラグビーワールドカップ日本大会まであと一年。國學院栃木ラグビー部OBの田村優が日本を代表する司令塔として活躍している。6月のイタリア、ジョージア代表とのテストマッチではスタンドオフとしてトライを演出するなど存在感を発揮した。7月下旬、テストマッチやサンウルブズの試合を終え、母校を訪れた。高校時代の田村はどんな選手だったか。ワールドカップに向けて、どんな準備をしているのかを取材した。11月にはニュージーランド・イングランドとのテストマッチを控える。ラグビー日本代表「ブレイブブロッサムズ」の一人である田村の思いを聞いた。

 鷹箸浩、斎藤泰行・文 荒井修・写真 

 

 県内高校ラグビーの強豪、國學院栃木高が整備した真新しい人工芝グラウンドに、筋骨隆々、浅黒く日焼けした男が現れた。髭をはやし、顔つきは精悍、映画俳優のような彫の深い顔だ。片手にスマートフォン、白いTシャツに短パンと、くつろいだ様子だ。

 

 この日も30度を超える猛暑日だった。

 グラウンドではラグビー部員が集まって、パス回しをしていた。吉岡肇監督や浅野良太コーチがグラウンドで部員に指導をしている。

 吉岡監督は田村優が来たことを確認すると、「おお、田村」と声を掛けた。浅野コーチが「練習してきたの?」と話しかけると、「もう練習してきちゃいました」と笑顔を見せた。

 田村優。

 ラグビーに興味がある人でこの名前を知らない人はいないだろう。日本代表のスタンドオフ(SO)、司令塔として存在感を出している人物だ。

 6月9日、大分県で行われたイタリア代表とのテストマッチ第1戦では、ライン際を走り込んできたフッカーの堀江翔太にキックパスを送って、トライを演出したほか、勝ち越しのペナルティゴールを決めた。試合は34-17で快勝。勝利に最も貢献したプレーヤーの一人だ。

 兵庫県で行われたイタリアとのテストマッチ第2戦では22-25で敗れたが、6月23日に愛知県で行われたジョージア代表とのテストマッチ第3戦では悪天候の中、世界最強のスクラムを誇るジョージアに完封勝ちをおさめた。

 田村はペナルティゴールを3本失敗したが、コンテストキックを多用し、相手を揺さぶったり、飛ばしパスなどでトライを演出した。

 イタリア、ジョージアとのテストマッチについて田村は「よかったと思います。だいぶ進化しました。チームの特徴が出ました。すごくよくなっている」と手応えを感じているようだった。「三つ全部勝ちたかったですけど、2試合目のイタリアは強かったです」。

 日本代表のこの3試合は2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップを前に、日本代表が世界のトップレベルのナショナルチームと互角、いやそれ以上の力を持っていることを見せつけた。その象徴的存在ともいえる田村が、テストマッチを終え、オフを利用して母校の國學栃木を訪れた。

 「世界で戦っていけるベースをここ(國學栃木)で作ってもらいました。感謝しかないです」

 オフなど時間があれば訪れる國學栃木のグラウンド。吉岡監督に指導を受けながら、田村がラグビーをやっていた3年間はどういう時間だったのか。

<<
4件
>> 4