数字には残らない頑張り

竹内が話す「今のようなプレー」とは、体を張って味方に付くディフェンスの行く方向を遮り、味方を自由にさせるプレーや、ビッグマンでありながら速攻の先頭を走ることだ。竹内が相手ディフェンスの壁となることで、味方シューターはオープンなシュートが打てるし、速攻の先頭を走ることで波状攻撃を仕掛けたり、ディフェンスを引き寄せてパスを出し、味方に外からシュートを打たせることだってできる。

ただ、残念なことに、こうしたプレーは数字には残らない。シュートを決めているわけではないので、歓声も上がらない。でも、「それでいい」と、竹内は笑う。

「もう、若くないのでチームのエースになろうなんて思ってないし、自分は2番バッター的な感じでいいです。4番バッターになろうなんて思ってません(笑)」

 

 ブレックスが他チームと大きく違う点は、自分の数字や活躍にこだわる選手がいないことだ。「数字にこだわらない」「チームのために」と口で言うのは簡単だが、それを心底理解してプレーで表現することは難しい。ましてやチームを引っ張ってきた経験がある選手なら、その自信やプライドが邪魔をすることもあるだろう。そうした自我をチームの勝利に向けられる選手を、一流と言うのかもしれない。

 安齋HCは「誰が何点取ったかなんて気にしていない」と断言するほど、評価の基準は明確だ。「チームのために」を第一に考えてプレーする集団が、個人技で勝負するチームに勝つ。その瞬間に立ち会えるは、この上ない楽しみである。

 

藤井洋子・文 写真

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