「承認欲」との直球勝負 バッティングセンターに通う46歳会社員男性 仕事の後、己に打ち勝つ
夜に見つめる 第3部「交差」④
汗ばむ陽気が続いた4月中旬、宇都宮市の「ミヤバッティングスタジアム若松原店」。ドーム型の建物に平日でも次々と客が入ってくる。軟式5、硬式3の計8打席が設けられ、70~130キロのさまざまな球速を楽しめる。金属音は午後9時を過ぎても鳴りやまない。
大会を控えた小中高生、仕事帰りの会社員、高齢男性、若いカップル-。郊外の夜のバッティングセンターで一球に何かを求め、老若男女、皆思うままにバットを振る。
1人の男性が5番ケージの扉を開けた。軟式85キロ。打ち始めてすぐにファンファーレが響いた。「ホームランおめでとうございます」。それも立て続けに3回。
「1ゲーム3本は初めてだよ」。宇都宮市、会社員小河徹(おがわとおる)さん(46)は興奮気味だ。毎日通い、毎回本塁打を狙う。「承認欲求が満たされるんですよね」。掲出された自分の名前を指さし照れ笑いを浮かべた。
毎回1ゲーム25球。感覚が良ければもう1ゲーム挑む。職場は埼玉県内。宇都宮市内の自宅を早朝に出発し、午後8時に帰宅した後、足を運ぶ。「朝起きて歯を磨くのと同じですよ」。すっかり日常の一部だ。
休日に地域のソフトボールクラブでプレーする。ポジションは「捕手以外どこでも」。内外野を守り、マウンドに立つこともある。元は5年ほど前、学童チームに所属していた長男と不定期で訪れるようになった。当初は、強豪クラブの実力者たちに追いつくため腕を磨く、つもりだった。 通う日数が増え、毎日行くようになってすぐだった。ある日、芯を食った打球が、狙うでもなく15メートル先に掲げてある的を捉えた。
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