午後の柔らかな日が差し込む雑木林。穏やかでやさしい里山時間が流れます(陶芸メッセ・益子付近)
午後の柔らかな日が差し込む雑木林。穏やかでやさしい里山時間が流れます(陶芸メッセ・益子付近)

 冬の益子はいいものです…。
 春と秋の陶器市には多くの観光客であふれ返る、陶芸のまち「益子」。そのにぎわいとは打って変わって、凛とした空気に包まれる冬の益子はとても静かで穏やかな時間が流れます。
 里山を照らす日の光は優しく、器や人との出会いにも、よりぬくもりを感じられることでしょう。
 体も気持ちも縮こまってしまいそうな冬は嫌いだけれど、でも、
益子の冬はいいものです。

自然 益子町の最高峰雨巻山から朝日が昇る。だんだんはっきりしてくる里山の景色。寒くて少し温かい瞬間。
自然 益子町の最高峰雨巻山から朝日が昇る。だんだんはっきりしてくる里山の景色。寒くて少し温かい瞬間。
人々 暮らしに寄り添う益子焼を、そして何よりこの土地と人とのつながりを愛する民芸店ましこの3代目夫妻。
人々 暮らしに寄り添う益子焼を、そして何よりこの土地と人とのつながりを愛する民芸店ましこの3代目夫妻。

あったかい里山時間

須田ヶ池

「須田ヶ池」。益子の四季を感じられる場所です
「須田ヶ池」。益子の四季を感じられる場所です

土舞台

益子の風土に根差した祭り「土祭(ひじさい)」の象徴「土舞台」(藍の道)
益子の風土に根差した祭り「土祭(ひじさい)」の象徴「土舞台」(藍の道)

笑い閻魔

七つの伝統釉で彩られた西明寺の「笑い閻魔(えんま)」の陶板アート(益子駅前)
七つの伝統釉で彩られた西明寺の「笑い閻魔(えんま)」の陶板アート(益子駅前)

手から生まれるぬくもりの数々

 益子の冬の一番の魅力は、のんびり、じっくり益子焼と向き合えることです。昔ながらの雰囲気が残る益子本通りを〝器散策〟。気になる器を一つ一つ手に取って、土のぬくもりを感じてください。
 そして、冬の青空が広がるのどかな里山へ。不思議なほどゆっくりと流れる時間の中で、おいしいものに心まで満たされるよう。
 さらには益子焼だけでなく、丁寧で美しい手仕事の世界にも触れることができます。冬の益子で、「手」から生まれるもののぬくもりと心躍る出会いを楽しんで。

まず益子焼 じっくり

民芸店ましこ

愛用したくなる 器との出会いを
暮らしに寄り添う器との出合いを楽しんで
暮らしに寄り添う器との出合いを楽しんで

 益子で初めての益子焼専門店として1952(昭和27)年、濱田庄司の命名により開業しました。店内に並ぶのは、益子らしく、毎日使いやすい器を中心に、土もののあたたかい感じが伝わるような作品。伝統釉による色や形、厚みのある益子焼の中にも、作家それぞれの個性が光っています。
 歴史ある店を受け継ぎ、益子焼の魅力を伝える3代目の中山武さん(50)と久美さん(50)夫妻。武さんは「手に取ってもらって選んでもらうのが理想かな」と話します。
 アットホームな店にはお茶飲み話を楽しみに来る人も多く、「近所のサロンにもなってるんですよ」と笑顔を見せる久美さん。益子焼のぬくもりと共に店主夫妻の人柄の温かさが心地よく伝わってきます。

Shop Data
民芸店ましこ
益子町益子2901
☎0285・72・2231
営業時間 午前10時〜午後5時  
定休日 火曜
P3台
会話が弾む店の一角は、居心地よいサロンのよう
会話が弾む店の一角は、居心地よいサロンのよう

陶芸家岡部耕太郎さん

〝笑撃的〟頑張るマッチョ
個性豊かなシリーズ作「がんばれ! マッチョ!!」
個性豊かなシリーズ作「がんばれ! マッチョ!!」

 出会ってしまったら忘れられなくなってしまう、陶芸家岡部耕太郎さんの人気シリーズ「がんばれ! マッチョ!!」。
益子の土を使用して25年ほど前から制作を続けています。そのきっかけになった作品が箸置き。「両サイドが上がってる感じがマッチョに見えた」そう。
 これまでブックエンドやマグカップなど100種類以上を制作。
 「今は口角を上げて〝苦しいけれど、楽しい〟的な表情にしている」と岡部さん。今後のマッチョの動向に目が離せません。

Artist Data
陶芸家 岡部耕太郎

@okabe_kotaro (instagram).

新たな「マッチョ」が生まれる工房で
新たな「マッチョ」が生まれる工房で

Crafty

伝統を受け継ぐ 手仕事の美しさ
シンプルで美しいレザー製品などが並ぶショップ
シンプルで美しいレザー製品などが並ぶショップ

 天然素材と日本の伝統技法によって、丁寧に時間を費やして作られた作品に出会える場所。ショップ内には竹細工やレザー製品、ニットなどが並び、それらをサンプルとして一つ一つセミオーダーで制作販売しています。
 「古くから日本に伝わる技術をしっかり残したい」と話す代表の髙見一也さんと佳乃さん夫妻が制作するレザーバッグなどは栃木レザーを使用。継ぎ目のない、シンプルで美しい表情が魅力です。人気のショルダーバッグ(2万6400円)は完成まで3カ月待ちですが、手仕事だからこそ、待つ時間も楽しみなのかもしれません。
 また、不定期でワークショップを開催。レザーチャームの制作を楽しめます。詳しくはインスタグラムで確認を。

Shop Data
Crafty
益子町長堤415-1
☎080・5960・4095
営業時間 午前11時~午後4時
定休日 水・木曜
P6台

@crafty.jpn (instagram).

木のぬくもりを感じる空間で作品にじっくり触れて
木のぬくもりを感じる空間で作品にじっくり触れて

テレンコテレンコ

また来たくなる 中国茶とお菓子
日差しが心地よい店内でのんびり味わう「雲南紅茶」
日差しが心地よい店内でのんびり味わう「雲南紅茶」

 まちの中心部から茂木へと向かう途中、落葉樹の雑木林に囲まれた里山に昨年オープン。現地で仕入れてくる中国茶や台湾茶などのドリンクと益子産の無農薬全粒粉そば粉を使って焼き上げるお菓子を味わえます。
 蜂蜜や熟した果実を思わせる濃密な甘い香りとやわらかい口当たりの「雲南紅茶」(750円)や漢方にも用いられるランの一種で、黄色の美しい花と透明感のある甘みが特徴の「石斛花(せっこくか)」(850円)など、どれもお薦め。
 オーナーの宮島由紀子さんは「何煎も楽しめるので、時間を気にせずゆっくりしていただけたら」と話します。そうしたお茶にぴったりなのが、そばの香りが広がる香ばしい生地と粒あんが絶妙な「有機粒あんのそば粉たい焼き」(350円)。小ぶりですが、その分、羽根は大きめです。
 由紀子さんの夫で陶芸家の宮島將實さんの器が手作りのお菓子に趣を添えています。

Shop Data
テレンコテレンコ
益子町芦沼486-2
営業 土日・月曜午後1~5時(LO)
P10台

@terenco_terenco (instagram).

オーナーの宮島由紀子さん
オーナーの宮島由紀子さん

茶屋雨巻

里山の自然の中 絶品ナポリピザ
益子の里山と絶品ナポリピザを満喫
益子の里山と絶品ナポリピザを満喫

 益子の最高峰、雨巻山の登山口駐車場からすぐの石窯ナポリピザの店。里山が広がる町の中でも、とりわけ自然豊かなエリア。店は2011年にオープン。この土地が気に入り、都内から移住したオーナーの髙松泰さんが遊び場として作り始めた場所が、仲間たちの力も加わっていつしか店になってしまったのだとか。
 ピザの生地粉、トマトソース、チーズなどイタリア産の厳選素材を使用。気軽に味わえる平日のランチ「人気セット」(2200円〜)がお薦めです。一推しはメキシコの「サルサベルデ」(緑のソースの意味)と自家製サルシッチャのピザ。他に単品メニューやデザートも。
 季節ごとに里山の恵みもメニューに登場。一緒に店を切り盛りする妻の直子さんは「近所の方がユズを持ってきてくれたり、土地と人と生活がつながっている」と笑顔で話します。

Shop Data
茶屋雨巻
益子町上大羽1234
☎0285・77・5354
営業時間 午前11時半~午後2時半(LO)
定休日 月・火曜
P8台
冬の風景とは対照的に色や楽しさにあふれた店内
冬の風景とは対照的に色や楽しさにあふれた店内

「益子人」が語る「益子の冬」の魅力

☆民芸店ましこ

中山 武さん

 「(冬に関係なく)人とのつながり」

中山久美さん

 「カフェに入ってコーヒーやチャイなどあったかい飲み物を益子焼の器で楽しめる」

☆陶芸家

岡部耕太郎さん

「秋に収穫したサツマイモを自作の土鍋に入れてまきストーブで焼くのが、冬のささやかな楽しみです」

☆「Crafty」

髙見一也さん

「星がきれい。それと、天然のため池が凍るのが楽しい」

☆「テレンコテレンコ」

宮島由紀子さん

「ここは広葉樹に囲まれていて、冬になると葉っぱが落ちて眺めがいい。芳賀富士も見えるんですよ」

☆「茶屋雨巻」

髙松直子さん

「冬の朝、なんでもない雑草や落ち葉や土に霜が降りる。そんな日常の小さな風景やキツツキのドラミングがよく聞こえること」