「今年の暑さはちょっと異常」…と思いながら、もう何年?
 地球温暖化などによる気候変動の影響といわれる気温の上昇。今夏もまた〝例年通り〟に「猛暑」予想です。最高気温35・0度以上の「猛暑日」は増え続け、それにより起こる熱中症への対策は、今や社会全体の重要な課題です。6月1日には労働安全衛生規則が改正され、働く場における熱中症対策が、事業者に義務付けられました。
 私たち一人一人も、今、改めて熱中症について正しく理解し、予防と対策について考えましょう。本格的な夏の猛暑が来る前に。決して他人事にしないで。

梅雨明けもまだだというのに、晴れた日には真夏のような太陽がじりじりと照り付けます
梅雨明けもまだだというのに、晴れた日には真夏のような太陽がじりじりと照り付けます

熱井夏男一家の暑い夏危機一髪!2025

 

どうする熱中症 対策と対応

 決して他人ごとではありません…。ある一家が遭遇した熱中症の危機! どうやってピンチを回避したのか? あるいはどうすればよかったのか? 日常生活にありがちな熱中症の危機を「熱井家」の家族の〝証言〟から再現。具体的な対策・対応を専門家のアドバイスから学びましょう。
自らの身を守る…2025夏。

■祖父 夏造さん(78)囲碁とゲートボールが趣味

 公民館で囲碁サークル。嫁が送ってくれると言うんじゃが、手間をかけさせるのもなんだし、足腰も鍛えないといかん。先日のこと。家を出るころ晴れて気温も急上昇。なぁに歩いて10分ぐらい大丈夫、と思って出たんだが、途中で体に力が入らなくなり、しゃがみこんでしまった。幸い木陰で休んで回復したんじゃ。ゲートボールも楽しみじゃが、試合となると真剣。ちょっと体調不良でも頑張ってしまう。冷房は好きじゃないので、夜は消して寝てるよ。

■父 夏男さん(44)建設会社営業。ゴルフ好き

 自分は中学、高校と野球部で、体力には自信があります。昔は一日中グラウンドにいても平気でしたが、毎日こう暑くては…。営業ですから、身なりはちゃんとしないといけないのはつらいです。建設現場に出向いて頭がクラクラすることもあります。お得意さま回りの合間にコンビニでアイスコーヒーをゴクゴク。はぁ、今日は3杯目です。趣味のゴルフの時は二日酔いでも早起きで、暑いのも気にならずナイスショーット! 昼食のビールがうまくて、つい飲みすぎちゃいます。

■母 夏子さん(42)専業主婦。犬の散歩は苦手

 家族がみんな出かけたら後はのんびり…ってわけにはいきませんよ。一日中フル回転で、家事をこなしているんです。暑いですけど1人だけなのに、冷房つけたらもったいないじゃないですか。掃除や洗濯中は意味ないし、それに調理の時はなおさら。うちはパパも娘も揚げ物好きなので、大変ですけど、顔真っ赤にしながら頑張って作りますよ。あっ、晩ご飯の支度の前に犬の散歩に行かなきゃ。夕方なのにまだ30℃以上あるわ。アスファルトで肉球熱くないのかしらね。

■娘 夏美さん(13)中学2年生。部活はテニス

 ふぅ、今朝も寝坊しちゃって朝ごはん抜き! 今日は体育の授業もあったし、部活が一層きついわ。大会に向けて猛練習はわかりますけどね、素振り100回とか、サーブ20本とか気軽に言わないでよね、先輩。でも後輩の手前、泣き言も言えないわ。水たっぷり飲んで、さぁ行くわよ。

重要なのは水分・塩分

 「それ、危なかったのか?!」。 「熱井家」の日常に潜んでいた熱中症の危機。家族それぞれのケースを、真岡市の特定医療法人福田会福田記念病院の福田晴美院長に検証していただきました。熱中症対策として重要なのは「水分」と「塩分」の両方を補給することです。気を付けましょう。

検証CASE熱井家
福田晴美院長に聞く

 

■祖父 夏造さんの場合

 力が入らないのは熱中症の一つである熱疲労の症状。木陰で休んで回復したのは幸いです。対処として、日陰やクーラーなどが効いた涼しい所に移動して休みましょう。空気が流れていないと熱が気化しないので、通気性の良い場所が大切です。
 就寝時の冷房については室温によります。労働基準法によって定められていますが、28℃以上は体に毒。熱帯夜(夜間の最低気温が25℃以上)ならクーラーを使用して。汗をかくようなら水分を補給しながら休んでください。

■父 夏男さんの場合

 汗をいっぱいかいてるシチュエーションですよね。スポーツドリンクがお薦め。もしくは、塩分入りの熱中症対策ドリンクがいいですね。糖尿病の人は0㌔㌍のもので。
 昼食のビール。アルコールは利尿作用があるので、本来は汗を出さないといけないのにお小水で出てしまいます。スポーツドリンクを飲んでください。どうしてもお昼にビールを飲むなら、午後はゴルフをせず、涼しい部屋で読書やストレッチなどをして過ごしてください。


■母 夏子さんの場合

 「1人だからもったいない」…節約よりも自分の体、命が大切。さらに、「暑くて顔を真っ赤にしながら頑張ってます」ですが、顔色という点で、顔が赤いのは熱中症に見られる症状です。まれに熱失神になる時は、顔色が青くなる場合もあります。
 気温が30℃以上あるアスファルト。自分の手で触ってみてください。犬がかわいそうです。
 

■娘 夏美さんの場合

 朝食はその日のエネルギー源です。それを取らないのでは、体と頭を動かすうえで、効率が悪いですね。
 中学生の部活動。急に気温が上昇するゴールデンウイークごろに多いのですが、ちょっとくらいの暑さだと頑張っちゃうんです。また塩分を取らないで水だけというのはNG。血中のナトリウム(塩分)が減少すると、けいれん発作が起こります。その場合は救急搬送です。
 一言で言えば、炎天下ではスポーツをさけることです。

【取材協力】特定医療法人福田会 福田記念病院 福田晴美院長

【対策のポイント】

①暑い場所に長時間いない。
②仕事などでやむを得ない場合は、休憩を取り、水分と塩分の補給を。
③お薦めはスポーツドリンク。または、水1㍑に約2㌘の塩を入れたものでもOK。