
アートの 明日を開く
先週の「読書の秋・ブックカフェ特集」はお楽しみいただけたでしょうか。今週は、芸術の秋として県内U40のアーティスト特集をお届けします。次世代の芸術を担う人気作家やその創作への思いを取材しました。
陶芸のまちで〝旬なもの〟
陶芸家 益子 鈴木恵深さん(40)(tsuchinomegumi)


道の駅ましこで大ヒットした益子焼の「はにわガチャ」制作者として活躍。既にガチャは終了し、現在は展示販売しています。〝身長〟3・5㌢、手のひらサイズのはにわは、どれもご機嫌そう。旬のアイテムや動物を持っていたり、ユニークなスタイルだったりと見る人の心をくすぐります。
成形しやすく、焼き上がりの色の風合いがいい信楽の土を使用。これまで2万個以上を制作してきました。鈴木さんの中で当初の「はにわってかわいい」という思いから、作っているうちに〝はにわ愛〟に変化も。「その歴史を知りたい」とツアーなどに参加し、当時の人たちがどんな気持ちで作ったのかを考えました。
「当時の人たちは時代の風景を作っている。私は今の時代の旬なものを作りたい」と話す鈴木さん。「この先の未来、『令和の時代には栃木県でこんなはにわが人気だったんだね』と未来の人たちにくすっと笑ってもらえたらうれしい」

◆イベント FKDインタパーク店で19日から開催される「ハロウィーンマーケット」に19日のみ出店。午前10時~午後4時
命のみずみずしさ描く
日本画家 宇都宮 谷中美佳子さん(37)


淡く優美な色彩の中にある透明感。描かれた動植物からは生命のみずみずしさが感じられるよう。谷中さんは「命の〝ぐるり〟(巡り)について考えながら、古今東西の天然素材を通して人と動植物が生きた痕跡を描いて遺すということを探求しています」と制作の思いを話します。
モチーフは、草花や空など日々出合った風景から世界各地に伝わる伝説、龍や鳳凰など幸せの象徴まで。主に絹本と呼ばれる絹の布地に天然岩絵の具や植物染料で描いています。母となり子育てを楽しみつつ、創作活動に意欲も。今年、「Seed山種美術館日本画アワード2024―未来をになう日本画新時代」で入選を果たしました。
花の中で特に好きなモチーフは桜。小学生の頃、絵を描くのが好きだった故祖父から聞いた「桜の色はピンクじゃない。いろんな色がある」という言葉が今も記憶に残っています。その言葉を大切に、独自の世界観を持って色と真摯(しんし)に向き合います。

◆イベント情報 31日~11月15日、東京・南青山の新生堂で「谷中美佳子展-つむぐ-」を開催。午前11時~午後6時(15日は午後5時まで)。日曜、祝日休
「細かい絵」突き詰めて
画家 宇都宮 小林優太さん(39)


身近にあるボールペンを使い龍や風神雷神といった伝説上の生きものから自らの心の深淵に迫った抽象画まで、緻密に描き込んだ力強い作風が特徴。2021年に宇都宮アンテナショップ「宮カフェ」で第1回目の個展を開いたのを皮切りに、現在は宇都宮市内を中心に年3回個展を開き作品の発表を続けています。22年には第2回関西アートコンペで抽象画「思考の内側」が大賞とホルベイン賞をダブル受賞。
宇都宮メディア・アーツ専門学校コンピューターグラフィックス科を卒業後、印刷会社で広告デザインの仕事をしていましたが、29歳で適応障害を患いその後退社。静養中に少しずつ絵を描き始めポストカードの販売なども行っていましたが、母親が急逝したことも重なり、うつ病を発症。再発を繰り返しながらも「もっとやりたいことを突き詰めてやろう」と、細かい絵を描く今のスタイルにたどり着いたといいます。
「好きなことは続けたほうがいい。作品を通してそんなメッセージを伝えられたら」と微笑みながら話します。
◆イベント情報 画家 小林優太 個展 11月2~4日午前11時~午後5時半、ギャラリー絆和 絵画など、およそ30点を展示。全日作家在廊
頭に浮かぶ世界、形に
画家 益子 飯山太陽さん(24)

色鉛筆やアクリル絵の具、ペンなどで描かれる世界は、にぎやかで色彩豊か。
「頭の中に浮かんでくるものを自由に描いています」。益子町の画家、飯山太陽さん(24)は、子どもの頃から絵を描くのが好きで、中学で美術部に入部。専門的に絵画を学んだことはなく、独学で学びました。高校では県内外のコンテストで相次いで入賞。その頃から趣味ではなく「作品」として描いていくようになったといいます。

飯山さんは、新しい情報の記憶や漢字を意味として捉えることが苦手な障害があり、現在は多機能型事業所で就労しながら創作活動に励んでいます。「絵には自分の好きなものを登場させています。頭の中にストーリーがあって、前の作品とつなげたりさせています。自己満足なのですが」と笑顔。


今後は「県内はもちろん、色々な場所や大きなところで個展をしたい。たくさんの人に作品を見てもらいたいです」と話します。現在は大きなF200号の作品を制作中。また、「近未来的ノスタルジア」というアーティスト名で音楽活動もしています。