敬老の日特集
高齢者の生活支援
9月16日は「敬老の日」です。年を重ねた時、住み慣れた自宅で暮らしたいと希望している人は多いのではないでしょうか。今回は、高齢者が自宅で無理せず、生き生きと暮らすためのアドバイスやグッズを紹介。在宅の高齢者をサポートする農村部での取り組みも取材しました。
商品積んでレッツゴー!


「繋ごう農村」の
移動スーパー「ツナゴー」
過疎地の声に寄り添い発起
心と体の健康サポートも


農村の高齢者などが元気に暮らせるための生活支援や健康ケアのため、那珂川町を拠点に移動スーパーを運営するまちまもり会社「繋ごう農村」。元那珂川町地域おこし協力隊で代表の佐藤豊彦さん(59)が5年前に立ち上げました。「ずっとここで暮らしたい」。ある過疎地で暮らす高齢女性の言葉がきっかけです。
移動スーパー「ツナゴー」は高齢者のニーズに合わせ、なるべく調理をしない食料品を中心とした品ぞろえ。販売先は那須町や大田原市、高根沢町、宇都宮市など広域にわたり、1週間で個人宅110軒以上と特養ホームなどの施設4軒を回ります。
さらに個人宅訪問時には、社員でコミュニティーナースの坂本朋子さん(50)が同乗。会話をする中で高齢者それぞれの心の声をキャッチし、心と体の健康をサポートします。
佐藤さんは「一人になっても住み慣れた家に住みたいという人は多いと思う。過疎地の高齢者は農業的資源や景観、文化・風土を守っている存在。その生活を維持していくことに意味がある」と語ります。
また、高齢者が生き生きと暮らす農村を未来へ持続するため、若者の新規就農や移住人口の増加を目指しています。その一環として、毎週土曜は都内の「すみだ青空市ヤッチャバ」に出店。新規就農者を中心に地元生産者の有機野菜を販売し、お客との交流によって農村と都市をつなぐ場にもしています。
(問)同社☎070・2826・5881。https://xn--p8j1a2136afhtrjt.com/overview
_____________________________________
県リハの相塲(あいば)さんと宇都宮市の田崎さんに聞く
自宅で無理なく暮らすには
住み慣れた自宅で暮らす、と言っても、実は家の中は転倒などの危険がいっぱい。その注意点のほか、高齢者が健康で自立した生活を送るためのアドバイスや体操について、県リハビリテーション専門職協会地域包括ケア・介護予防推進部会部会長の相塲みどりさん(理学療法士)と宇都宮市保健福祉部高齢福祉課基幹相談支援センター相談支援グループ担当係長の田崎裕美さん(保健師)に教えてもらいました。

転倒の危険はいっぱい


手すり取り付け、足元の整頓など
転倒しない環境を整える
家の中で転倒を防ぐための工夫
筋力の低下や白内障などによる視力の低下、認知機能の低下など、さまざまな機能の低下によって高齢者は転びやすくなります。家の中を点検し、転びにくい環境を整えましょう。

多いのは、玄関の段差が高かったり、こたつなどのコードに足が引っかかったりして転倒するケース。固定されていないカーペットや床に置きっぱなしにした新聞やチラシを踏んで滑るなど、家の中には危険なポイントがたくさんあります。

部屋の整理整頓、通り道には物を置かない工夫を。コンセント類は束ねる、カーペットは四隅を固定。バランスを崩しやすい浴室は手すりやマットを取り付けて。
トイレでの急な立ち上がりはめまいの原因になるので、で

きれば洋式にして、手すりを付けて立ち上がりを補助できるようにしましょう。階段を上り下りする時はスリッパを履かない、子どもやペットの急な飛びつきにも注意が必要です。
フレイル(虚弱)について
足腰鍛えて筋力アップ
自立した生活の足かせとなるのが、フレイル(加齢により、活動能力がじわじわと衰えていくこと)。「もう年だから動くのが嫌」といった運動不足をきっかけに足腰が弱り、食も細り気持ちも内向きになるなどの悪循環に陥りやすくなります。やがて転倒しやすくなったり、認知機能が低下したりとさまざまな症状が現れ、自立して元気に過ごす生活機能が低下していきます。
しかし、フレイル状態になっても改善に取り組むことで、健康な状態に戻すことができます。
まずは自身の状態を知り、フレイルの予防や改善に努めましょう。
●フレイル予防
隙間時間でトレーニング
テレビを見ながら体を動かす「ながら運動」がお勧めです。こまめに行うのがコツ。
★簡単ハーフスクワット
❶肩幅よりやや広めに足を開く。

❷机に手をかけ、おしりを後ろに突き出しながらしゃがむ。5、6回。

※ひざはつま先より前に出さないように曲げる。
★片足立ち
❶姿勢をまっすぐにして立つ。

❷イスに手をかけ、片足を軽く上げる。左右各1分。

※(悪い例写真)イスに寄りかかって体がくの字に曲がらないように

*モデルは理学療法士の金子宙さん
●高齢者の相談窓口
地域包括支援センターへ問い合わせを
県内の各市町村に設置されている地域包括支援センターは、高齢者の介護や福祉の相談窓口になっています。フレイル予防や介護予防に関する活動も実施。住まいのあるエリアを担当するセンターが分からない場合は、市役所や町役場に問い合わせてください。
_____________________________________
生活に潜む危険を回避
暮らしのアドバイス
@高齢者編
入浴中の事故防止

入浴する際、気を失って溺れる事故に気を付けましょう。
寒暖の差が大きいと、血圧が急激に変化して貧血状態になり、意識障害を起こすことがあるので、あらかじめ浴室や脱衣所を暖めておきます。暖房設備がなければ、湯を張った浴槽のふたを外しておくといいでしょう。
食後すぐや飲酒後、体調の悪い時に風呂に入るのは避けます。入浴前に同居する家族に一声かけておくと安心です。
心臓に負担をかけないよう、まずはかけ湯を。湯の温度は41度以下にして、つかるのは10分までを目安にします。浴槽から出る時は手すりや浴槽のへりを使い、ゆっくりと立ち上がります。
楽で安心な台所に
使い慣れた台所で思わぬけがをすることも。事故防止のため、機能を見直すのも一つの対策です。
ガスこんろは、火の消し忘れが火事につながったり、服の袖などに燃え移ってやけどを負ったりする危険性も。自動消火の機能が付いた製品への交換や、IH調理器という選択肢もあります。
照明器具の選び方

高齢になると視力が衰えるだけでなく、明るさを感じにくくなり、まぶしさにも弱くなります。適切な照明器具を選ぶことが大事です。
照明器具は部屋の広さに合わせるのが基本ですが、少し明るめがお薦め。10畳の部屋なら、12畳用などにします。内装も含めて、部屋全体が明るくなるようにします。
強い光が直接目に入らないようにする工夫も必要です。電球がそのまま見える照明は避け、読書や作業をする時は補助照明も活用しましょう。
明るい場所から暗い所に行くと、目が慣れるまでに時間がかかります。廊下も明るくするほか、段差などの危険な部分にも明かりを付けます。
(絵・いずれも 上田わち)
_____________________________________
DAISOで見つけた!
お助けグッズ
DAISO宇都宮御幸ケ原店で、暮らしのお手伝いをしてくれる便利なアイテムを見つけました。今回紹介する4商品の他にも、ビンのふたやペットボトルのふたが簡単に開けられる「マグツールビンオープナー」などさまざまなアイテムがあります。
(問)DAISO ttps://www.daiso-sangyo.co.jp
おくすりケース(抗菌、14マス)(110円)

薬やサプリなど裏表で14マス分入ります。底が斜めになっていて、スライドして取り出すのが簡単。14マスあるので、「朝夕で1週間」といった使い方も。持ち運び用に6マスもあり。
ハンドル野菜カッター(330円)

容器にタマネギやニンジン、キュウリなど野菜を入れハンドルを引くことで中の刃が回転し、みじん切りが完成。タマネギが目にしみず、みじん切りが快適にできます。
スチール製ステッキ(165円)

歩行の補助に最適です。長さは固定で調節できませんが、長さは74~86㌢まで2㌢刻みで7サイズを展開。実際に握り、自分に合ったサイズを選んで。軽いので外はもちろん、家の中に何本か置いて気軽に使えます。
杖ホルダー(ベルトタイプ)(110円)

椅子などに取り付けられます。マジックテープで縦横どちらでも使用可。外出時だけでなく家の中でも。サイズが合えば、傘や掃除用具などのホルダーとしても。
_____________________________________
教えて! あなたの困り事
高齢者を対象に、アスポ紙上で「あなたの困り事」を募集したところ、日々のいろいろな思いや悩みが寄せられました。投稿の一部を紹介します。
力もなく体動かない
70歳くらいまでは、いろいろとできたような気がするけど、73、4歳になると、とてもできない。高い所はよろけるし、階段も下りるのが大変です。
袋のジッパーは切り口を切っても、次に使う時開けられない。段ボールを捨てる時、手の力がなく、折りたためません。ハサミ・カッターがないと生活できないです。やらないからできないと言われるけど、体が動かないのです。
歯・目・耳がダメになって困ります。
益子町・中山イツ子(74)
独居人の生活支援を
子どものいない叔母がいますが、最近夫が亡くなってしまい、買い物や通院に困っています。
「ふれあいバス」が通っていますが、乗車場所にも歩いていくことが難しいようです。福祉の窓口を利用するのも一人では何もできないようです。
子どもがいれば、いろいろと助かる部分があると思いますが、私たちも支援できればいいのですが、自分たちの生活でいっぱいです。
栃木市・カズちゃん(75)主婦
ネット以外の手段を
ネット難民です。市政だよりなどを見ても、詳しくはホームページで…などが多い。それなのでネットをやらないわれわれのためにも同じような情報が届くような手だてをぜひ願うばかりですが。よろしくお願いいたします。
栃木市・若年寄り(87)無職
診療科の見直し願う
加齢などによる「骨盤臓器脱」に悩まされ、福島県郡山市まで通院しています。しかし、夫も高齢で遠距離運転は心配です。同居の娘は体に障がいがあり、息子夫婦は横浜在住のため、子どもたちを頼るのも限界があります。
高齢になると持病が複雑になり受診する科が多岐にわたる場合もあるので、デマンドバスなどの交通手段の確保もよいのですがそれだけでなく、高齢者が受診しやすいよう県内の医療機関の診療科の見直しを図ってもらえるとありがたいです。
日光市・ゆっきー(70)主婦