しもつけ21フォーラム/露報復「緊張高まる」/防衛省、兵頭氏が講演

 下野新聞社の会員制組織「しもつけ21フォーラム」の10月例会が13日、宇都宮市内で開かれ、ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所政策研究部長の兵頭慎治(ひょうどうしんじ)氏が「ロシアによるウクライナ侵攻の衝撃」と題し講演した。ロシアが併合したクリミア半島とロシア本土を結ぶ大動脈のクリミア橋が8日に爆破され、ロシアによる最大規模の報復攻撃があったことで「新たな展開が始まりつつあり、緊張がいっそう高まっている」と言及した。

 兵頭氏は冒頭、国際社会が受けた衝撃として、核保有国が大規模な軍事侵略を行ったことや、想定をはるかに超える惨禍が生じていることなどを説明。ウクライナ侵略の理由として「ロシアは歴史的に常に周辺国の外圧を受けてきたという思いが強く、国境の外側に縄張りがないと安心できない」とロシア独自の安全保障観を挙げた。

 米国など北大西洋条約機構(NATO)加盟国とロシアの対立は、日米同盟に対しても同様に影響すると指摘。「ロシアが中国や北朝鮮に依存しながら軍事連携する中で、東アジアの安全保障環境はいっそう厳しくなる」と述べた。

 戦況の見通しを会場から問われると、「境界線を巡り散発的に戦争は何年も続いていく」と長期化の見方を示した。「戦争の段階が上がっていく中で、ロシアが核使用という非合理な決断をすることがあってはならない」と強調した。

 兵頭氏は愛媛県出身で上智大大学院修了。外務省在ロシア日本大使館専門調査員、防衛研究所地域研究部長などを経て2020年から現職。