しもつけ21フォーラム/「退造は意志を貫いた」/稲嶺元沖縄県知事が講演

 下野新聞社の会員制組織「しもつけ21フォーラム」の7月例会が13日、宇都宮市内で開かれ、元沖縄県知事で株式会社りゅうせき(沖縄県)参与の稲嶺恵一(いなみねけいいち)氏(88)が「沖縄の歴史から沖縄の未来を見つめる~荒井退造(あらいたいぞう)が見た沖縄とは~」と題して講演した。「命を救う意志を貫いた」と荒井の功績をたたえた。

 稲嶺氏は、宇都宮市出身の荒井が太平洋戦争末期に沖縄県警察部長を務め、県民を疎開させて多くの命を救ったと説明した。「人の命が何より大事、命を救うことが最優先だという意志を貫いた」と強調した。

 荒井の就任は1943年。度重なる空襲で県幹部が病気や出張を口実に沖縄を離れる中、「沖縄に残って仕事を続け、県民を守るため疎開を進めた」と評した。 

 投降し捕虜になることより、自決が美徳ともされた時代。「退造さんは『生きろ、生き抜くんだ』と訴え続けた」と語り、「部下など身近に接した人にとっては神様のような人だった」と力を込めた。

 荒井と共に県民の命を救った沖縄県知事島田叡(しまだあきら)の出身地の兵庫のほか、沖縄、栃木の各県の関係者が顕彰活動に力を注ぐ。稲嶺氏は「連携を強化し、20万人を救った沖縄の大恩人の功績を伝え続けてほしい」と願った。

 稲嶺氏は中国遼寧省大連市生まれ。1998年から沖縄県知事を2期務めた。妻は宇都宮市出身。