少しずつ、秋も深まってきました。旧暦11月15日は「油祝い」の日とされ、昔から油を使った料理を食べ、本格化する寒さに備える風習がありました。たっぷりの野菜が入った「けんちん汁」も、その一つ。今回は人気カフェ直伝のレシピをはじめ、お薦めの店やイベント情報など〝具だくさん〟の内容でお届けします。
寒さに備える郷土食
けんちん汁

里芋やゴボウ、白菜など、秋から冬にかけて収穫される路地野菜を使った郷土料理のけんちん汁。家庭それぞれの味で親しまれています。四季折々の野菜をふんだんに使った家庭料理が人気の宇都宮市平出町の「えがおカフェ」でレシピを教えてもらいました。
宇都宮のえがおカフェに聞く
作り方 *4~6人分

深谷恵子さん(69)=写真右から
❶材料を切る。里芋3~4個をひとつまみの塩で軽くもみ、水で流してぬめりを取って小さめの乱切りにする。ゴボウ10㌢、ニンジン(小)1本も小さめの乱切りにし、ゴボウは酢水に漬けておく。大根5㌢を乱切りにする。白菜1~2枚は葉と芯の部分に分けて切る。こんにゃく120㌘をあく抜きし(塩もみでもよい)、2㌢角の薄切りに。刻み油揚げ1枚分。木綿豆腐半丁をさいの目切りする。長ネギ1/2本を小口切りする。
❷鍋にサラダ油小さじ2を入れ、ゴボウを炒めて香りを出す。ニンジン、大根、こんにゃくの順に炒め、めんつゆ大さじ2を入れて炒める。
❸水1㍑を入れ、あご入りだしパックを入れて強火でひと煮立ち。
❹煮えてきたら白菜の芯と里芋、油揚げを入れる。だしパックを取り出す。
❺みそ大さじ2を入れた後に、豆腐、長ネギ、白菜の葉を入れる。
※みそは、2~3種類を合わせると味がまろやかに。
宇都宮市平出町679の1
☎028・688・0634
午前11時半~午後2時(午後1時半OS)
※朝、夜は予約のみ営業
㊡日・月曜
Ⓟ30台
「五目炊き込みご飯」(5合)
❶具材の準備。ゴボウ15㌢をささがきにし、水に漬ける。ニンジン1/3本を細切り。シメジ(小)1パックを小分けに。シイタケ(大)2枚をスライス。刻み油揚げ1枚半分。
❷といだ米5合を入れた炊飯器にしょうゆ大さじ1、酒、みりん、市販の昆布だし各大さじ2を入れ、5合の目盛りまで水を入れる。具材を入れて炊き込みご飯機能で炊く。
❸炊き上がったら、おこげを良く混ぜる。器に盛り、三つ葉、白ごまを散らす。
「小松菜の煮浸し」
❶ひとつまみの塩を入れ、小松菜1把をさっとゆでる。
❷食べやすい大きさに切り、水気を切ってだし汁(市販のめんつゆを3倍濃縮で使用)に入れてさっと煮る。
❸器に盛り付け、白ごまやかつお節をかけて。
お店で味わう けんちん
日光 けんちん汁 古はし 日光
昔ながらの味に温まる

日光の門前町で、老舗旅館の暖簾を受け継ぐ店。家庭のダイニングのような温かい雰囲気の中、「けんちん汁ランチ コーヒー付き」(1210円)を味わえます。
旅館時代には、賄いだったけんちん汁。大根、白菜、里芋、豆腐など7種の具をしょうゆと少しのみそで煮込みます。「昔ながらの家庭料理を味わってもらいたい。また来てもらえるような愛される店になりたいです」と女将の古橋史子さん(62)。
けんちん汁のほか、白身魚などのフライ、日替わりの小鉢2品、前菜の盛り合わせ、茶わん蒸し、コーヒーが付きます。

日光市御幸町3の10
☎0288・54・0004
午前11時~午後2時(午後1時半OS)
午後5時~同9時(午後8時最終入店、同8時半OS)
※なくなり次第終了
㊡木曜、不定休あり
Ⓟ5台
卯三郎 那須
つきたて餅 田舎料理堪能


軒が深いどっしりとした古民家にたどり着くと、かがまないと入れない小さな玄関がお出迎え。どこか懐かしく温かい田舎料理を味わえます。
「けんちん雑煮」(900円)は、毎朝つきたての餅を使用。煮込んでトロトロ、みそベースのけんちん汁の味がしっかりと染み込んでいます。
同店人気メニュー「ぽこぺん膳」(1300円)は、具だくさんのけんちん汁のほか、おこわ、あんころ餅、煮物など、田舎料理がたくさん詰まったお膳。心あたたまる料理で、おなかも心も満たされます。

那須町高久乙湯道東2727の344
☎︎0287・78・7322
午前11時~午後2時
(土・日曜、祝日は同2時半まで。12~3月の平日は午前11時半から)
㊡火曜、元日
Ⓟあり
名草イワナパーク 足利
地産野菜たっぷり11月の味

国の天然記念物「名草の巨石群」の近く。自然豊かな里山にある釣り堀の名物は地元の女性たちが作る手打ちうどんです。
11月に入ると登場するのが「けんちんうどん」(750円)。里芋、大根、ニンジン、ゴボウなど地元で採れた野菜がたっぷり。コンニャク芋が収穫できたときは、こんにゃくも手作りに。名草自慢のおふくろの味が楽しめます。
つゆはかえしにしょうゆを使い、かつお節と昆布でだしを取ったものに米みそを加えた優しい味わいです。

足名草上町2431
☎0284・41・9778
午前9時~午後5時(4~11月の土・日曜、祝日のみ)
Ⓟあり
※平日の問い合わせは名草ふるさと交流館☎0284・41・9687
芋に(煮) 出会って! 下野
27日までの土・日曜、祝日開催
9店舗の味わい食べ歩き

下野市観光協会は11月、芋煮汁の食べ歩きを楽しむイベント「芋に(煮)出会って!」を開催しています。3回目の今年は、市内の飲食店9店舗が参加。
芋煮汁は地元産の里芋、かんぴょうを使っているのが特徴。定食や弁当、おにぎりのセット販売をはじめ、つけ汁うどんやスパイススープで味わうユニークなものまで、各店が工夫を凝らしたメニューを提供。27日までの土・日曜、祝日、各店とも数量限定で販売します。
また12月11日まで、各店で芋煮を食べた人に「芋煮札」を配付。3枚(3店舗分)集めると、先着100人に賞品をプレゼントします(市観光協会オアシスポッポ館で受け付け)。
参加店情報などは同協会ホームページで紹介。
(問)同協会☎0285・39・6900。
足利市と「けんちん汁」
深い縁、給食にも登場
鎌倉建長寺発祥の汁 足利学校の行事食に

「けんちん汁」発祥の地とされるのが、神奈川県鎌倉市の建長寺。料理をした時に出た野菜の皮やヘタを油で炒めて作った精進料理「建長汁」が、いつしか「けんちん汁」と呼ばれるようになったという説があります。

鎌倉市と歴史的なつながりの深い足利市では、家庭だけでなく、節分や十五夜、えびす講など、さまざまな行事食としても親しまれています。
足利学校の校長である歴代庠主(しょうしゅ)には、鎌倉五山と呼ばれる建長寺や円覚寺から多くの僧侶が派遣されてきました。その影響から、毎年11月23日に行われる孔子をまつる伝統儀式「釋奠(せきてん)」では、コロナ前まで、参列者の昼食(現在は中止)の献立にいつもけんちん汁が含まれていたといいます。
また今年9月には、鎌倉市との姉妹都市締結40周年を記念した献立として、市教育委員会が小中学校の給食でけんちん汁を提供しました。栄養教諭がけんちん汁の由来や鎌倉市との歴史的な関わり、栄養素について紹介。けんちん汁は、食育にも一役買っています。