27日から11月9日は「読書週間」。仕事や学業、家事などで日々忙しく、「書店や図書館に行けない」「読む気力がない」という方は意外と多いかもしれません。今回は、各分野で活躍する栃木県ゆかりの4人が、とっておきの一冊を教えてくれました。期間中、すてきな本との出合いがありますように。

十二国記(小野不由美著、新潮文庫)

サッカー選手 鮫島彩さん(35)

自分と向き合う 別世界へ

「もともと本がすごく好きでひたすら読書をするタイプ」と話す鮫島さん
 

宇都宮市出身で、大宮アルディージャVENTUSに所属する元なでしこジャパン(日本女子代表)の鮫島彩さんがお薦めするのは、小野不由美著「十二国記」。気になる中身は「自分たちが住んでいる世界と昔の中国のような異世界。両方の世界を舞台にして繰り広げられるファンタジー小説です」

本との出合いは、高校卒業後に入った社会人チーム時代。かわいがってくれた先輩から「だまされたと思って読んでみて」と薦められたのがきっかけでどハマりすることに。    

攻守両面で積極的にプレーする鮫島選手 Ⓒ1998 N.O.ARDIJA

人間の欲望やねたみ、王としての責任…。「登場人物の心情や考え方に共感する部分も多く、読み始めると物語に引き込まれます」。鮫島さんにとって、本は「自分のリアルな生活から頭を切り離せる大切な存在」。自分の時間を作りたい、自分と向き合いたいと思った時に「隙あらば読書しています」

新フランス料理 料理ルセットを超えるもの
(アラン・シャペル著、柴田書店)

オトワレストラン オーナーシェフ音羽和紀さん(74)

偉大な師の我が〝バイブル〟

本を手に、恩師との思い出を語る音羽シェフ 

食と農をつなぐ活動に尽力する料理人を表彰する農林水産省の「料理マスターズ」で昨年、制度初のゴールド賞を受賞。栃木の〝郷土フレンチ〟をけん引してきた音羽さんが、「この一冊をおいて他にはない」という愛読書。「料理界のダ・ヴィンチ」と言われた偉大な料理人で、自身も敬愛する師アラン・シャペルのルセット(レシピ)とエッセーを紹介しています。

伝統を取り入れ、独創性にあふれたレシピと深い思想がつづられた同書。「同じ素材でも土地や季節だって違う、さらにカットの仕方でも味が違う。ルセットが全てではなく、料理の経験と素材をよく見極める力が大切」と話します。

「パワーがあり圧倒的な優しさと努力と学びで生きている」。心に在り続ける師の謙虚な姿勢を強く感じています。

破門(黒川博行著、角川書店)

お笑い芸人だいまじん じんのすけさん(49)

痛快! 二人のやりとり絶妙

「本は1カ月に1冊のペースで読んでいます」と話すじんのすけさん

お笑いコンビ「だいまじん」のじんのすけさん。大田原市出身で、とちぎテレビの「うたの王様」や「ゴルフの王様」のMCを中心に活躍しています。

お気に入りの1冊は、黒川博行著「破門」。主人公の建設コンサルタントの二宮が、ヤクザの桑原とコンビを組む「疫病神」シリーズの5作目です。本作は、第151回直木賞を受賞。シリアスなタイトルとは正反対に、関西弁での2人のやりとりがおもしろく、痛快エンターテインメントです。

本作でマカオが舞台となるシーンでは、じんのすけさん自身も実際にマカオに行き、現地での空気感を味わったそうです。「ハラハラドキドキの展開を、いつも楽しんで読んでいます。シリーズの最初から読むのがお薦めですよ」

蜜蜂と遠雷(恩田陸著、幻冬舎)

フルート奏者 栗田智水さん(42)

演奏家を疑似体験 共感も

「読んだ後、とても満足感があります」と栗田さん

「読みながら頭の中に音楽が鳴り、情景が浮かびました」。茂木町出身のフルート奏者で、とちぎ未来大使や、もてぎふるさと応援大使、音楽講師としても活動する栗田さんのお薦めは、ピアノコンクールを舞台にした青春群像小説です。

知人に薦められ、「衝撃を受けた」と栗田さん。450㌻超を2日間で読破しました。物語には数人の人物が登場し、それぞれの視点で進行。「臨場感あふれる描写でコンクールに出る疑似体験ができ、ドキドキ感を味わえます。それぞれに人生や人間模様があり、真摯に音楽に向き合っていて、応援したくなります」と魅力を語ります。

自分がコンクールに出ていた日々を思い出したり、指導者として生徒の事を考えたり、両方の立場で共感できるストーリー。「音楽家はもちろん、演奏をしない人でも本の世界に没入できる素晴らしい一冊です」