みずみずしい県内産マンゴーには秘密があるんです

 

安全に暮らす
… 環境を考えてみた

甘くない地球環境
甘いマンゴーの話

 私たちを取り巻く環境は今、地球温暖化をはじめ森林破壊や海洋汚染など大きな問題を抱えています。温暖化対策としてこれからの環境とエネルギーについて考えた時、石油や石炭などの化石燃料に代わり、持続的で再生可能、カーボンニュートラル(1)なエネルギーとして注目されているのがバイオマス(2)です。
 県内でも自治体や民間企業によって活用が進んでいます。先週の紙面でアスポが考える「今必要な、5つの暮らし方」のうち、安全に暮らす~環境を考える~として紹介した、県内のバイオマスの取り組みについて改めて取り上げました。

 

 

 

 

 黄金色のマンゴー…。それは、環境に配慮した活動の副産物というより、地球からの〝ご褒美〟のように光り輝いて見えます。決して楽観視できない地球環境と、おいしいマンゴーの関わりは?

木質バイオマス

 

トーセンの東泉清寿社長と那珂川バイオマス発電所のプラント。製材工場と隣接するバイオマス発電所を拠点にした半径50㌔㍍の経済圏構想「エネルフォーレ50」を推進します
燃料になるスギやヒノキのチップ
バイオマス発電所のボイラー内の様子


余った森の〝資源〟で発電を

製材会社「トーセン」
国産材生産量日本一
    
 那珂川町大山田下郷の旧馬頭東中跡地にトーセン(本社・矢板市山田)の県北木材協同組合那珂川工場はあります。スギやヒノキの丸太が積み上げられた敷地の一角に建つ大きなプラント。それが、2014年10月に稼働を始めた「那珂川バイオマス発電所」です。
 建設の鍵となった木質バイオマスの活用。東泉清寿社長(68)が発電所の建設に踏み出す大きなきっかけとなったのが、10年前の視察で訪れたオーストリアでの光景です。「日本は真っすぐな木しか収穫しない。ところが、近代林業の発祥地オーストリアでは木のくずも大切にしている」
 燃料となるのは、製材の過程で出た端材や間伐され山に放置された林地残材など、スギやヒノキのチップ。それを燃焼させた蒸気でタービンを回して、毎時2000㌔㍗の電気を発電し、送電しています。これは、那珂川町の約8割(約5000戸分)を賄える発電量です。
 「山を大切にしたい」という強い思い。林業において「人づくり、道づくり」を実践する東泉社長。閉校になった中学校の活用は、「そこにある資源や人を生かす」という理念と合致。木をフルに生かすための木質バイオマスの活用。東泉社長は「森林資源を循環させ、地域に新たな産業と雇用を生む。それによって、地域経済が活性化し、自立につながっていく」と未来を展望します。
 (問)トーセン☎0287・43・8379(代表)。

 

 

 

 

「那珂川バイオマス松野エネルギーセンター」のオーストリア製ボイラー
松野エネルギーセンターに搬入されるスギとヒノキのチップ。燃料として1日30㌧を使用します
国道294号沿いにある交流型直売施設「あかねてらす」での販売。午前10時のオープンからマンゴーファンが訪れます
果肉が甘く幻のマンゴーといわれる「玉文」

 

なかよしマンゴー

5年で収穫量20倍
町のブランドに!

鈴木材木店が実践
余剰熱エネルギー
   
 トーセンの木質バイオマスによる熱利用から新たに誕生したのが、那珂川町地域資源活用協同組合の鈴木材木店の鈴木栄子さん(59)とスタッフが栽培している「なかよしマンゴー」。糖度18~20度という格別な甘さと香りが特徴です。同町松野のビニールハウスで、6種類150本を栽培します。
 ハウスに温水を送っているのが、隣に建つ「那珂川バイオマス松野エネルギーセンター」です。木質バイオマスを燃料に1時間当たり4㌧の蒸気を他社へ送気し、余剰熱で50~60度の温水を作りハウスに供給しています。
 マンゴーを初めて収穫した2016年は200個でしたが、現在は4000個を収穫。町の名前と「マンゴーでみんな仲良しに」との思いを込めたなかよしマンゴーは、町のブランドとして着実に成長しています。
 販売は月~土曜午後1時~同5時、同店で。7月末まで。不定休(収穫状況による)。
 また、3~12月までの毎週日曜にオープンする同市谷田の「あかねてらす」でも販売。
 (問)鈴木材木店☎0287・96・3046。

 

 

 

草木系バイオマス

 
同市穂積の農地で栽培しているエリアンサス。身長160㌢の髙野社長の背丈を越え生育中㊤、草丈約3㍍50㌢まで生育したエリアンサス(農研機構提供)

燃料になる草 エリアンサス

バイオマス産業都市
さくら市の取り組み
    
 茂木町(2015年度)、大田原市(17年度)に次いで県内3番目に国の「バイオマス産業都市」(3)に選定されたさくら市。草本系バイオマスとしてイネ科多年生の「エリアンサス」(4)を原料にした地域自給燃料の事業化を実現。農研機構と国際農林水産業研究センターの技術支援を受け、地元企業と市による国内初の取り組みです。
 エリアンサスを市内の耕作放棄地で栽培し、ペレット(原料を粉砕、熱で圧縮し、小さな円筒状に造粒したもの)燃料に加工しているのが、同市喜連川の「タカノ」です。〝エネルギーの地産地消〟を目指し、エリアンサスの栽培を始めた故髙野誠社長の遺志を妻の啓子社長(57)が継いでいます。
 年間20~25㌧を収穫。栽培7年目の今年は、同市穂積と河戸地区の耕作放棄地計9㌶で栽培。刈り取りをする3~4月には草丈が約3・6㍍にも成長します。
 現在、ペレットは市営第1温泉浴場もとゆに供給。ペレットボイラー導入前は、年間102㌔㍑の灯油を消費しており、二酸化炭素排出量は255㌧でした。市農政課は「構想を進めていく中でさらに供給先を増やしたい」と、新設予定の学校給食センターでの導入を検討しています。
 (問)タカノ☎028・686・4981。

 
もとゆのペレットボイラー内。現在使用するペレットは、エリアンサスと木質原料の混合㊤、サイロからボイラーに投入されたペレットの燃焼熱は、熱交換器を介して温浴施設に供給
エリアンサスのペレット
 


1…カーボンニュートラル  排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量であること。植物が成長過程で光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込むが、その植物を燃焼させ二酸化炭素を発生させても、排出される二酸化炭素はもともと空気中に存在していたもので、大気中の二酸化炭素総量はプラスマイナスゼロになること。

2…バイオマス 間伐材などの木や生ごみ、稲わら、家畜の排せつ物など、太陽エネルギーによる光合成によって自らを作り出すことのできる有機性資源。

3…バイオマス産業都市 国の関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が2013年度より推進。

4…エリアンサス 熱帯・亜熱帯地域に自生するイネ科の植物。東北南部・関東北部の標高が低い地域が北限。越冬できるため長期的な周年栽培ができ、茎からすべてバイオマスとして収穫できる。機械収穫にも適し、雑草化しにくい。