芸術の秋、秋の夜長に音楽を楽しむこともあるのでは。毎回、一つのテーマに沿って、人物や団体を紹介する月イチ企画「Tochigi 人びと」。今回は県内で楽器を製作している人たちに登場してもらいました。なじみのあるギターやウクレレから三味線、さらに和太鼓や篠笛などの伝統的なものまで。楽器作りにかける情熱や心意気があふれています。

 

🎵 木と話し 神へ届ける音づくり 🎵

 
和太鼓 寺澤太鼓店 6代目
寺澤友右衛門 真一さん(43)=那須烏山
 

 「木と話せないと形にもならない」。ケヤキの丸太を削るところから和太鼓製造の全てを行う「御太鼓師」。その言葉から、この世界に生きる職人としての重みが伝わってきます。200年以上続く太鼓店。製造・修理を行いますが、多くは屋台のおはやし用の太鼓で神社や寺の大太鼓のほか彫刻屋台の一式工事なども請け負います。

 10年のサラリーマン生活後、職人になって15年。「その土地その土地の祭りがある。太鼓は、土地の神様と話すための楽器として発達してきた」と、県内外の依頼先へ出向き「その土地の気温や湿度、祭りの季節、人の気持ちの熱さなどを肌で感じる」ことによって音をつくります。

 工程で最も気を使うのは、胴を作り3~5年かけて乾かすこと。そして、重要な音を決めるのに、胴の内ぐりを鑿(のみ)や彫刻刀などで削っていく作業です。

 職人の一方で「御祭コンサルタント」の顔も。また、音楽ではなく「音が動く、リズムが動く、人の心が動くような太鼓やおはやしを伝えていきたい」と、指導にも情熱を注ぎます。  

 

(問)寺澤さん☎090・3008・8518。

 

 

🎵 全国でも10人の匠  初心忘れず 🎵

 
三弦師 大正邦楽器西方工房
大塚正治さん(67)=栃木
 

 三味線に携わること48年。三味線の製造販売、修理を行っています。三味線製作は分業制で、主に、棹(さお)作り、胴作り、皮張り、仕込みに分かれます。原木から仕立てまで、全工程ができる職人を三弦師といい、県内では大塚さん一人、全国でも10人ほどです。

 子どものころから物作りが好きで、自分の腕で仕事ができる実力社会で働きたいと思い、19歳で三味線職人の道へ。埼玉県内の工場で約8年修行し、木材の見極め方、各作業の技術を体得。名人高橋竹山の三味線の修理など、貴重な経験もしました。三味線も習い「弾く人の立場で作ることができるようになった」と振り返ります。

 36歳で独立し、より正確に、質の高いものを目指して、道具や機械も自分で作り、一丁一丁愛情をもって製作しています。初めて作った三味線は、初心を忘れないために、店内に飾っています。

 「お客さんの喜ぶ顔、感謝の言葉がうれしい」と大塚さん。現在は修理が多く、全国からさまざまな依頼があります。「いろいろな人との出会いで、いまの自分がある。続けられる限り、要望に応えていきたい」。新品は予算に応じて受注生産です。

 

 (問)大正邦楽器西方工房☎0282・92・8877。

 

 

🎵 高級材で生み出す魅惑の形 🎵

 
ギター A.T.guitars
髙野篤さん(40)=さくら
 

 個性的なジプシーギターの「形」に魅了され、2005年に地元さくら市でギター工房「A.T.guitars」を設立。ジプシーギターをメインにアーチトップ・ギター、エレキ・ギター、ウクレレなどのオーダー製作と修理を行います。

 高校時代に弾いていたエレキギター。キットを買って組み立てもしました。演奏することよりも「作る」ことに興味が深まり、大学卒業後にカナダのギター製作学校でギター製作と修理を学びました。

 松や杉、ローズウッド、マホガニーなどの高級材を使用。「音はできてみないと分からないのでプレッシャーも大きいけれど、病気みたいなもの」。ライフスタイルとしてのギターが常にあります。

 「さくらジャンゴ・ラインハルト・フェスティバル」を主催し、ジプシーギターの魅力を広めるとともに「本格的にギターを作りたい人を受け入れていきたい」と話します。  

 

(問)同工房☎028・686・3530、メールinfo@atguitars.com

 

 


🎵 自由自在の音奏でるために 🎵

 
ギター・ウクレレ ヤマネギターズ
山根淳志さん(42)=佐野
 

 1本のアコースティックギターでも表板はスプルース、横板と裏板はインドローズ、ネックはマカボニーと、それぞれ違う木材を使用。「木材の種類や厚み、力木の削り具合によっても音は変化します。ギター製作は音をつくるのが楽しい仕事。自由自在に音をつくれるようになりたい」

 大学では物理を学んでいましたが、ギター製作の仕事に興味を持ち卒業後は専門学校へ。その後長野県のギター工房で7年修業し独立。当初はウクレレの仕事が多く、販売店のオーナーから「ウクレレはもっとやわらかくて丸い音色」と、ギターとの音色の違いなど、ダメ出しされたことが勉強になったと言います。

 6年前からクラシックギターの演奏を習い始め、今年から本格的にクラシックギターの製作も始めました。

 工房では日曜日の午前10時から講師を招きクラシックギターの個人レッスン(約40分、月2回、7000円)を開催。  

 

(問)同工房☎0283・22・1818。

 

 

 

🎵 プロも認める音色を創出 🎵

 
篠笛・真竹笛 秀勝
田口英一さん(36)=佐野
 

 材料になる篠竹を刈り取り、1本ずつ炭火で火入れをした後、天日干し2カ月、陰干し約3年。年に300本ほどの篠笛を製作しています。奏者の好みの音色をつくる調律も得意とします。

 三味線の先生をしていた祖父の影響で、子どもの頃から和楽器に親しんできました。社会人になると市内の和太鼓チームに所属。太鼓や笛を演奏するうちに「笛だったら作れるかな」と、インターネットで情報を集め製作を始めました。8年が経ち趣味が仕事に。プロの演奏家からの信頼も厚く、製作した笛を使用した2人が2016年から計4回開催されている全日本横笛コンクールで優勝。「自分が優勝したわけではないけど、やはりうれしい」と笑顔。

 東京都の笛工房和康と群馬県にある尺八工房筦山の3人の職人でユニットを組み共同で展示販売するイベント「笛屋」を全国各地で開催。「講師を招いて初心者のためのワークショップも開いているので、興味のある人はぜひ参加してほしい」

 

 (問)HPアドレス  https://hidekatsu.jimdo.com