身近なのに知らなかった「ひと」「もの」「こと」。そんな再発見や新発見を求め月1回、アスポリポーターが独自の視点と興味を持って県内を巡ります。(第22回目)
昨年の春、プチ旅で訪れた栃木市。その際、食べられなかった「とちぎ江戸料理」が気になって再び訪れてみました。
まずは市観光振興課で予習。定義は「とちぎ江戸料理三か条」のいずれかに当てはまること。市の新しい名物料理として、昨年4月から市内の飲食店18軒と3団体がそれぞれの特色ある料理を提供しています。
参加店マップを参考に行き先を検討。江戸を感じ、歴史や伝統に触れながら食欲の秋を楽しむ旅に出掛けました。今回出合った「出流白そば」「出流柚餅子(ゆべし)」「甘酒」「ごぼう餅」「しもつかれ」「ずいきなます」「鮓烹(すしに)」は、すべて「とちぎ江戸料理」。いろんなメニューが楽しめる、ちょっと珍しいご当地グルメを味わう旅はいかがですか。
![]() ・出流白そば ・出流柚餅子 |
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試食させてもらった「出流柚餅子(ゆべし)」は出流産のユズを使った江戸時代の保存食。「ご飯のお供、酒のつまみ、料理の風味付けにも使います。郷土の味を伝えたい」と店主の新里宗一さん。
●出流観光会の7店は、各店ごとに、出流そばを生かした個性あるとちぎ江戸料理を提供。食べ歩きもお薦め。
●「柚餅子」は、中をくりぬいたユズの中にもち米粉や味噌などを混ぜて詰め、蒸して乾燥させたもの。同会では11月からユズを収穫し、柚餅子を製造。1月ころから同会の各店で販売予定。
そば処さとや
■栃木市出流町179
■☎0282・31・0919
■午前11時~午後5時
■火曜休
■Pあり
![]() ・江戸御膳 |
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メニューの原物は宇都宮市の県文書館に所蔵(下)


市街地へ戻り、江戸後期創業のかな半旅館(❷)へ。江戸時代の同店の会席料理のメニューの写真を見せてもらいました。釈文から器や料理の形態、内容、具材も記されていることが分かります。「平めさしミ」「しら魚」の記載もあり、海なし県で海の幸とは驚き。「いつかこのメニューを再現したい」と若女将志鳥泰子さん。
昼のみお食事処を営業。江戸時代の文献をもとに再現された料理が味わえる「江戸御膳」(1800円)は2人以上・2日前までに要予約。
かな半旅館
■栃木市万町5の2
■☎0282・22・0108
■食事処は月曜、第1火曜休
■Pあり
![]() ・甘酒 ・田楽盛り合わせ |
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油伝味噌
■栃木市嘉右衛門町5の27
■☎0282・22・3251
■午前11時~午後4時半
■火曜休
■Pあり
天明元(1781)年創業の油伝味噌(❸)へ。幕末から味噌の醸造を始め、現在も伝統を守り、厳選した原料をもとに天然醸造させた無添加味噌を製造、販売しています。
店内で、こうじで作る昔ながらの甘酒(200円)でひと休み。この時季は温かい甘酒がうれしい。甘酒は江戸庶民の栄養補給としても飲まれていたそうです。
素材に合わせて味噌の種類を変える田楽盛り合わせも人気。味噌、甘酒はお土産にもお薦めです。
![]() ・ごぼう餅
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ゴボウの食感や風味も生かされている「ごぼう餅」3個270円。土・日曜限定販売(ほかは3、4日前までに予約注文)
油伝味噌の味噌を使ったお菓子を求めて山本総本店(❹)へ。
店内には季節の和菓子や地元の人に愛される栃木銘菓が並びます。お目当てのお菓子は、江戸初期の料理書「料理物語」に紹介されている「ごぼう餅」。ゴボウの食感や風味をしっかり感じられます。ふかしたあとに素揚げしているので香ばしくてもちもち。油伝味噌の塩分控えめの甘味噌を使ったたれがよく合います。
山本総本店
■栃木市倭町7の13
■☎0282・22・4700
■午前9時~午後7時(月曜は午後6時まで)
■火曜休
■蔵の街第1駐車場利用
![]() ・しもつかれ ・ずいきなます |
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●季節限定のゆず巻き大根は11月から店頭に並ぶ予定。
●市勤労青少年ホームの料理講座で講師も務めるさなえさんは、講座のメニューに、江戸料理を一品加え、その特色や魅力を伝えています。

代々受け継がれる郷土料理をぜひ味わってください
手作り総菜が人気のかねふくストア(❺)へ。「しもつかれ」「ずいきなます」など、代々受け継がれる味が親しまれています。「しもつかれは、若い人にもヘルシーでおいしいと好評。
うちの味付けは塩分控えめなので高齢者にも喜ばれています」と同店の熊倉さなえさん。しもつかれ(小216円、中324円、大540円)は、栃木土産としても人気。地方発送も可。義母から受け継いだ店の味はナイショ。代わりにとちぎ江戸料理アドバイザー冬木れいさん提供の簡単江戸料理レシピカードをいただきました。「しもつかれ」と「ずいきなます」をお土産に。かねふくストア
■栃木市旭町16の3
■☎0282・22・1119
■午前8時半~午後6時半
■日曜休
■Pあり
![]() ・いわしの酢烹(すしに)
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「いわしの鮓烹」2本付き1080円、定食1296円。「鮓烹のイメージがわかないと思うので、ぜひ多くの人に食べてもらいたい」と店主の青山さん

「いわしの鮓烹(すしに)」ののぼりが気になって、巴波川沿いの海鮮和食料理店 魚宇(❻)へ。
鮓烹は江戸時代の料理本「豆腐百珍附録」に紹介されている、イワシをしょうゆと日本酒を入れたおからを使って重ね煮にしたもの。「江戸時代の文献に魚料理はほとんどないので、ぜひ作ってみたかった」と店主の青山至孝さん。当時の味付けはとても濃いので現代風に「いわしの鮓烹」を再現。ご飯のおかず、お酒のつまみにもよさそう。
山本総本店
■栃木市倭町3の17
■☎0282・22・0543
■午前11時半~午後2時、午後5時半~同8時半
■火曜休
■Pあり
江戸の風情や歴史、作り手の思いを感じながら味わう江戸料理は格別。お腹も心も大満足の旅でした。 (S)
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