アスポ創刊から10年。どれだけ多くの笑顔に出会っただろう。勇気とパワー、ぬくもりや感動をくれたあの人は今…。私たち6人のリポーターがこれまでの取材で最も心に残った人たちを再び訪ねました。
今年1月、百歳の詩人、柴田トヨさんが101歳の天寿を全うしました。亡くなった日の夜、トヨさんと2人だけになる時間があり、仏様のように安らかに眠るトヨさんに話しかけました。「トヨさん、心が癒やされ、励まされるたくさんの詩をありがとうございました。きっと天国でも詩を書いていますね。読んでみたいです」
お元気だった2年前、取材で訪れたトヨさんの小さな住まいには日射しが降り注ぎ、トヨさんの詩のようなやさしい陽だまりがありました。トヨさんが一人で夜を過ごし、健一さんと一緒に90歳を過ぎて詩作を始めた、特別な空間のように感じました。そんなトヨさんの半生を描いた映画「くじけないで」が11月16日から全国で公開されます。完成試写を観た健一さんは「シナリオが良かった。母の思い出と現実が淡々と描かれ、最後まで飽きさせませんでした」と話します。また、健一さんは、「母、柴田トヨを語る」(飛鳥新社、1000円)を今月10日に出版します。「今まで照れくさくて書けなかった母の思い出を書いた9編の詩を載せました。母に読んでもらえたらうれしい」と話す健一さんです。(R)
広がり続ける活躍の場
・2011年11月9日付
「譲ってほしい」。娘のために作った洋服にかけられる多くの声。「ものづくりが好き」な専業主婦が商品化の要望を受け、6年前にブランド「au soleil」を設立。3年前には鹿沼市にお店をオープンさせました。
そんな檜山さんを訪れたのは2年前。何通りにも着こなせるリネンの服、好みの生地やサイズを選べるシステムなど、すべてが新鮮でした。しかし、より印象的だったのは、常に「作る喜び、与える喜び」にあふれた人柄です。
この2年間、人気のデザイナーからショーへの参加を誘われたり、海外での販路が拡大したり、有名ファッション誌にも掲載されました。いずれも、檜山さんを慕う多くの人が「やってほしい」と舞台を整えてくれました。「私の力ではない。人に恵まれたお陰」と謙遜しますが、デザイナーとしての真の実力があるからこそ活躍の場はますます広がります。
最近では新人(Suzyさん)をチーフデザイナーに起用。チャンスを与える一方で、年内には都内の美術館でアートとしての洋服の展示会が開催されるなど「やってほしい」の声は後を絶ちません。(A)
・2008年3月12日付
夢を実現した関口さんの強い気持ちに感動した当時。益子町塙の店を訪ねると、あの時と変わらない焼きたてパンの香ばしい香りと優しい笑顔が出迎えてくれました。棚に置かれた額入りの記事を見て「大切に飾ってるんですよ」と関口さん。「おっ、うれしい!」。私にとって感激の光景です。
取材以降、真岡鐵道お土産品コンテストで優秀賞を受賞。現在は、同校の特別講師も務めます。「アスポの記事をきっかけに、早期退職して入学した方が2人いたそうです」との反響やアイデア光る新商品のことなど会話も膨らみました。
「焼きたてのパンは幸せの薫り。どんな香水よりもいい香りです。皆さんに長く喜ばれるようなパンを作りたい」。今も変わらない5年前の関口さんの言葉と姿に生き生きとした輝きを感じました。(K)
・2003年10月22日付
近くにあるフリースクールのボランティアで子どもと一緒にシャベルで土を掘って遊んでいたら、そのまま畑を作り始めてしまったと、屈託のない笑顔を見せていましたが、「将来は穀物のたい肥で自家発電を試してみたい」という大きな夢も抱いていました。
掲載後、すぐに永六輔さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組でも取り上げられることになり、ラッキィ池田さんがレポートにやって来るという、うれしいおまけもありました。
7年前に伊勢町の自家焙煎コーヒー店「モカ」の堀越敬介さんと結婚。3児の母になり、現在は子育てに奮闘中でしばらく畑仕事はお休みです。
今の心境を尋ねると「10年前と気持ちは何も変わっていません。きれいな空を子どもたちのために残していくために土を触って生活していれば間違いないというか、人や自然とのつながりを大切に生活していきたいと思っています」。(H)
2012年11月7日付
今月28日には横浜で開かれる「オールジャパンナチュラルチーズコンテスト」に工房を立ち上げて初めて出場します。「上位入賞も目標の一つですが、那須のチーズを広く知ってもらうきっかけになれば一番うれしい」と話します。入社間もない私には、あの時のロングインタビューは緊張でいっぱいでしたが、同世代の女性が頑張る姿に勇気とパワーをもらいました。
今年でオープン2年目を迎えるチーズ工房。これからの活躍も期待したいです。(T)
2011年5月11日付
「アスポに載って、気持ちが一層引き締まり、自分を見つめ直すきっかけになりました」と鈴木さん。司会で学んだこと、困難が多かった子育て経験で気づいたことを伝えたい、との思いが募り、“講師”という次の目標が定まったそうです。
今年、障がいを持つ長男が16歳になったのを機に、都内のセミナーなどで本格的に勉強をスタート。「年内に講演を行うことが今の目標。大変だけど楽しい」充実感に満ちた表情が印象的でした。
さらに、10年後について尋ねると「司会、講師を続けていたいです。夢を語ると、豪華客船のチーフクルーになって世界を回り、高齢のお客さまもワクワクする、みんなが元気になる演出をしたい」と笑顔。鈴木さんと行く船旅を想像して、私も笑顔になりました。(S)