
1984年生まれ。神奈川県出身。高校卒業後、山形県東北芸術工科大学に入学。芸術学部美術学科日本画コースを専攻。卒業後は「那須とりっくあーとぴあ」のほか、全国5か所に直営館をもつ「株式会社エス・デー」に入社。百貨店で行われるイベントなどの美術作品、外壁を描く制作なども行う。那須塩原市在住。
普通の絵に「面白さ」「不思議さ」「驚き」のスパイスを加えた「トリックアート」で、多くの来館者を魅了する「那須とりっくあーとぴあ」。現在、作品を手掛ける企画制作部スタッフは13人(そのうち11人が描き手)。大きなパネル、床、壁面など多岐にわたり作品を仕上げていきます。描き手のほとんどが男性スタッフの中、同じように意欲的に制作に励む企画制作部の野村敦子さんに「トリックアート」の舞台裏のあれこれや作品の楽しみ方を教えてもらいました。
●普通に絵を描くことと、トリックアートを描くテクニックの違いがあれば教えてください。
一番の違いは、遠近法をわかりやすく誇張して描くことです。奥をぼかして、手前をはっきり描く。額の枠内に収めるのではなく、外に飛び出して描くのも技法の一つです。
また、視覚・錯覚を利用して描くことや、色味の調整も重要な部分です。「トリックアートの館」、「アトリエ」では制作中の様子を見学できます。制作スタッフに質問してみると新しい発見があるかもしれませんね。

●一つの作品を完成させるまでの工程や期間は?
基本的には、約3畳分の大きさのパネル1枚に対し、1週間から10日かけて仕上げます。パネル1枚で完成する作品もあれば、何枚かを組み合わせる作品もあります。また、描き始めるまでに、私たち制作スタッフはデザインを考え、デッサン、全体像を作り上げ、決定となるまでの工程があります。
とりっくあーとでは、作品に触れることや、作品の中に入って写真を撮って不思議さを体験してもらうなどの「楽しさを教える美術館」でもあります。最終的に、お客さまがその作品に「加わる」ことで完成されるようにデザインを考えたりしています。


●今までで印象に残っている作品は何ですか。
2年前に描いた「だるま落とし」です。これは、デザインからサイズの計算、着手から完成まですべて1人で手掛けた作品になります。写真だと分かりづらいですが、全長4㍍ある大きな作品になります。この作品を見て、お客さまが加わって喜んでいる姿を見たときは、本当にうれしかったです(現在は愛知県で展示中)。
●トリックアートをより面白く、楽しむコツは。
なんといっても「恥ずかしがらずに、自分が主役になって楽しむ」ことと、私たち制作側はお客さまには思いきりだまされに来てほしい! と思いながら描いています。

●「トリックアート」の作品の制作を始めてもうすぐ8年。今後チャレンジしてみたいことや、絵を通して伝えたいことはありますか。
絵は、世代を超えてバリアフリーにコミュニケーションのとれる大切な媒体だと考えています。これまでも、この「トリックアート」という作品を通して、お客さまがどんな風に喜んでいるのか近くで見ることができ、コミュニケーションを楽しませてもらいました。
幼少期から「絵を描くことが大好き」でそのワクワクさを持ち続け、絵を描いているときの楽しさが伝わるような作品作り、さらなる技術の向上と、女性ならではの目線で描ける作品の制作に力を注ぎたいと思っています。
私にとって、絵は自分を表現できる大事な存在。これからも楽しさを共有できるものであってほしいと願っています。
「那須とりっくあーとぴあ」では、館内で撮影したアイデア満載の写真を公募する「おもしろ写真コンテスト」を開催中(応募は20日まで)。
■不定休
■(問)同施設 0287・62・8388