
1975年、宇都宮市生まれ。宇都宮文星短期大学美術デザイン科卒。在学中から雑誌などで漫画を発表。1月にコミックエッセー「うちのダンナは野菜バカ。」(ぶんか社)を刊行。現在はweb花丸(白泉社)で、舞台化された「男おいらん」のコミカライズ版を季刊掲載中。1児の母。
仔鹿リナ オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/kojikarina/
新鮮な野菜や果物、魚などを全国から集め、県民の豊かな食生活を支える宇都宮市中央卸売市場。同市場内の青果卸会社が舞台のエッセー4コマ漫画「うちのダンナは野菜バカ。」が1月に発売されました。実在する主人公のおかしな日常を描いた同コミックの著者で、同市在住の漫画家仔鹿リナさんに、作品作りの背景などをお聞きしました。
家族の日常●漫画家になったきっかけは。
初めて手にした漫画は、小学校3年生の時に、父におねだりして買ってもらった少女まんが雑誌「りぼん」です。それからは、漫画で育ち、「大人になったら漫画を描く」と決めていました。子どものころは、少女漫画家を夢見ていましたが、今はジャンルを問わずに、いろんな漫画を描きたいと思っています。
●「うちの旦那は野菜バカ。」では、ご主人のタカシさんご本人が主人公なんですね。
連載開始当時、実話系の雑誌で、育児を題材にした漫画を掲載していたので、創作ではなく「面白い実話」を探していました。
いくつか企画も出しましたが、ダイエットやファッションなどのありふれたネタだったので、なかなか通りませんでした。
身近で取材ができて、珍しいものはないかと悩んでいた時に、「私が興味を持ったように、青果市場内で働く旦那さんの仕事を、他の人たちも見てみたいのでは」と、思い立ちました。企画を出すと、あっという間に通ったので、すごくびっくりしました。
野菜のことしか考えていない旦那の日常に、私がオチをつけて描きました。連載中に分からないことがあると、旦那さんに聞けば何でも答えてくれたので、ありがたかったです。だからといって、一緒に作品作りをしてきたという感じはないです。

デジタル環境で描画する仔鹿さん。
「正直、遊びに行くよりも描いている方が楽しい」と話す一方で、「家族がいたから楽しく描くことができる」とも

●漫画の発表後、どのような反響がありましたか。
年齢を問わず、男女共に幅広くご感想をいただきます。生産者の方の生の声や、地方によって取り扱いの違う品種の情報交換などもできて、とても楽しいです。
月に一度、市場を一般公開する「うんめ~べ朝市」に合わせて、即売会も開催させていただきました。初めて漫画を見た市場の人たちからも、想像以上に喜んでいただきました。連載中は知らなか った市場の現状にも直面し、販促のはずがものすごい取材になりました。そして、市場の人たちのあったかさ、優しさを身に染みて感じました。
旦那さんは、漫画の内容が事実だからOKという感じで、自分が漫画の主人公になっていることは、どうとも思っていないような。ですが、Twitterを通じて、野菜の話を読者の方と楽しんでいて、それはうれしいみたいです。

●どんな事を考えて、漫画を描いていますか。
お金をいただいて成り立つものなので、「自分が描いていて楽しいものと、読み手が読みたいものとが、ちゃんと合致しているのか」は、考えています。ダメだと売上やアンケートにしっかり出ちゃうので。だからといって、読み手が読みたいものを探して描く、というのとは違います。あくまでも「これ分かってくれるかな」「これ好きかな」と、お伺いを立てながら、自分の描きたいものを描く感じです。
現在は子育て中なので、ママ漫画家さんの友達が増えました。みんな保育園などを利用して頑張って描いていて、刺激になります。
●次は、どんな漫画を描きたいですか。
まだ企画段階で、発表するのはだいぶ先になると思いますが、栃木を舞台に、また市場の事を描いてみたいです。「日本での食品流通のしくみにも関心を持っていただけたらな」と、静かに野望を燃やしています。