
1920年、芳賀町生まれ。80歳の時、宇都宮市中央生涯学習センターで活動する「絵手紙同好会」に参加し、絵手紙を描き始める。2013年の「第10回全日本年賀状大賞コンクール」(日本郵便主催)絵手紙部門で奨励賞を受賞。昨年7月、初の個展を開催した。
今年も新たな年がスタートしました。皆さんの手元にはどんな年賀状が届きましたか? 元日に95歳の誕生日を迎えた宇都宮市の山形トヨ子さんは、80歳から絵手紙同好会に参加し、毎年絵手紙の年賀状を出しているそうです。山形さんに、絵手紙の魅力や絵手紙に対する思いなどを聞きました。
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●絵手紙を始めたきっかけは。
叔母が油絵を描いていたこともあり、小さい時から絵を見たり描いたりするのは好きでしたね。
80歳の時、宇都宮市中央生涯学習センターの文化祭で展示してある絵手紙を見て面白そうだなと思いました。自分には描けないだろうと見ていたら、絵手紙同好会の人から「絵手紙は(絵が)下手な人でも大丈夫、歓迎しますよ」と声をかけてもらい、すぐに参加しました。それから月2回の教室(活動日)には、ほとんど休まず通っています。
●絵手紙を描くときに意識していることは。
何でしょう…、目の前にある物を見たまま描くだけですからね。
小さいころに叔母が油絵を描いている様子を、「ここはこういう風に描くんだな」と思いながら見ていたことが、絵手紙に生かされているかもしれません。あとは紙いっぱいに元気よく、なるべく明るい色を使うことで、見ている人たちが楽しい気持ちになってもらえればと思って描いています。
●心に残っている絵手紙は。
宇都宮大空襲の時、歩いて市外へ避難する途中におにぎりをくれた人がいました。自分だけでも食べていくのが苦しいのに、他人の自分たちにくれたことが本当にありがたくて、うれしくて…。その時もらったおにぎりは光って見えました。今でもしっかり覚えているので、その時の光景と感謝の気持ちを込めた絵手紙ですね。


●ここまで続けてこられたのはなぜでしょう。
同好会の先生方をはじめ、周りの皆さんが親切にやさしくしてくださることに尽きます。申し訳なく思うくらいよくしてくれて、本当に家族のような存在です。今までやめたいと思ったことは一度もありません。
●昨年、初の個展を開いたそうですね。
とんだことになったな~と思いました(笑)。ここでおとなしく絵手紙を描いているだけでよかったのに、まして人前に自分の作品を展示する勇気なんてありませんでしたから。皆さんいろいろ骨折って協力してくれたからこそできたものなので、感謝の気持ちでいっぱいです。
●健康の秘けつは何ですか。
腹を立てないこと。雨が降ると嫌だけど、傘屋は喜んでいる、そういう風に考えれば自然とプラス思考になります。それとご飯は腹八分目にして、間食をしないことで、3食がよりおいしく感じられます。食べ物は元気の源ですから。
●これから描いてみたいものや目標は。
ふと目に入った野菜や物をそのまま描けたらいいなと思っています。だから描いてみたいものといわれても思いつきませんね(笑)。目標も特にありません。ずっと教室に元気よく通えることが何よりの幸せ。今度の教室(の日)は天気がよければいいなって願うことぐらいで、いつでも「今」が楽しく幸せでありたいと思っています。


下:宇都宮大空襲の時にもらった「真心のおにぎり」に感謝を込めた作品