
1956年、足利市生まれ。東洋大学社会学部応用福祉学科卒業。1984年10月からココ・ファーム・ワイナリー農場長、2009年4月からこころみ学園施設長。
11月は、ヌーボー(新酒)の季節です。第3木曜日に解禁されるボージョレ・ヌーボーを前に、足利市の指定障害者支援施設「こころみ学園」のワイン醸造場「ココ・ファーム・ワイナリー」にヌーボーが登場。2000年の九州・沖縄サミット、2008年の洞爺湖サミットの晩さん会に使用され、世界から注目されるココワイン。同学園の施設長で、同ワイナリーの農場長である越知眞智子さんにワインづくりやワインの魅力などをお聞きしました。
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●今年のブドウの出来は。
今年のブドウで一番期待しているのは「プチ・マンサン」ですが、どれも面白いですよ。すごい気候が良かったので、ブドウが自己主張しやすいです。ブドウのキャラクターがちゃんと出せた、そのブドウの良さが出たところでタイミング良く収穫できたいい年。どんなことを彼らが表現してくれるか。楽しみです。
●ココ・ファーム・ワイナリーについて聞かせてください。
中学校の特殊学級の担任だった父が、知的な障害がある中学生のためにブドウを植えたのが始まりです。「体を動かして汗を流して、こつこつとやっていくことができるのが知的障害の子たちだから」ということで、1年に1回おいしいものが採れる、自分のやったことの成果が分かるのが、まさしく果物を育てることでした。

その仕事を身に付させるためにはたくさんの量が必要だと、子どもたちのために、この安い山の急な斜面を買って、56年前にブドウ畑を2年がかりで開墾しました。当初は、食べるための作りやすいアメリカ系のブドウを栽培していました。

ワインづくりを始めたころ、父がよく言っていたのは「福祉のものだから売れるっていうんじゃだめだ。おいしいから売れるものにしていかないと長くは続かない」ということ。そのために、本場の技術を学ぶことはできないかと思っていた時、ワインづくりのコンサルタントをしていたアメリカ人のブルース・ガットラヴに巡り会ったんです。
そのころの日本のワインの褒め言葉は「甘くておいしい」でした。まず、そんな私たちの味覚改革ですね。彼が本当にワインのおいしさや文化、「ワインづくりはブドウを作ることだよ」と教えてくれました。そして今、「ブドウがなりたいワインをつくる」、それがキャッチフレーズになりました。
ここの土地に合ったワイン用のブドウ作りを目指して、ブルースとはしょっちゅうけんかもしました。「日本で(ワイン用)ブドウを作るなんて」と思いました。その中で、ブルースも私も投げ出さなかったのは、絶対めげない知的障害の子たちが支えてくれたからです。畑の草刈りやブドウの一房一房に袋をかけたり、急斜面で踏ん張っている姿に力をもらいました。

●ココワインを一言で表現すると。
ブドウは、ここの土地に合ったもの。そのブドウの持っている魅力を引き出すために、健常者や技術を持った人、知的障害と呼ばれている人たちがみんな一緒に一生懸命に頑張ってつくっているワインだと思っています。
●もうすぐ、大イベントの「収穫祭」がやってきますね。
今年で31年になります。2日間で約1万5000人が来場します。老若男女いろんな方がみえます。みなさんすごいですよ。この斜面に座って飲むって、結構大変だろうなと思いますけど。
●ワインの魅力とは。
いっぱいバリエーションがあるから、どこかしらで自分が合致するものが探せる。ものすごく幅が広いし、自然なもの。よく、ワインって現地で飲むとすっごくおいしいけど、お土産だとそうでもないってことがあるって言いますよね。やっぱり、そこの雰囲気や誰と飲むか、どんな気分で飲むか。そういうもので色付けられ、そこでストーリーがあったり、味付けされプラスアルファになる素敵さがありますよね。

日時:15、16日午前10時半~午後3時半(受け付けは午後3時まで)
参加費:3000円
雨天決行
(問)収穫祭専用電話ガイド 0284・42・1807。
【こころみ学園のワイン醸造場ココ・ファーム・ワイナリー】
足利市田島町611
電話番号 0284・42・1194
http://cocowine.com/