Interview 彩色技術員・安達千恵子さん

2014/4/2
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後世に伝える文化遺産と技術


 2015年に400年式年大祭を迎える日光東照宮では現在「平成の大修理」が行われています。修復を担う公益財団法人日光社寺文化財保存会の彩色技術員安達千恵子さんに保存会に入るきっかけや修復にかける思いなどをお聞きしました。

現在、東照宮は「平成の大修理」の真っ最中ですが、彩色技術員はどんな仕事をされているのでしょう。
建物や彫刻を元通りに塗り替える仕事です。今は陽明門(国宝)から取り外された彫刻の塗り替え作業を行っています。
大まかな仕事の流れは、まず古い塗装をすべて落としてから、漆を塗り、絵具を塗り重ねて文様を盛り上げる置上(おきあげ)を行い、金箔(きんぱく)を施します。その後、彩色の作業に入ります。最初に彫刻の形や色彩を記録する見取図を作成し、これを見ながら岩絵具などを使って着彩して仕上げていきます。
取り外しができない物は、現場での作業になります。屋根の垂木と垂木の間に描かれた文様を修復する時などは、ずっと天井を向いたまま作業をすることもあります。
■彩色技術員になろうと思ったきっかけは。
小学生の時、あるテレビ番組で修復作業を見て携わりたいと思いました。そのころから上村松園の美人画や浮世絵が好きで、最初は絵巻物の修復をしたいと考えていました。高校卒業後は、京都で修業をしようと決めていました。ところが、両親の知り合いから「日光を見てからにしろ」と、連れられてきたのがこの保存会で、当時親方をしていた故吉原北宰先生から「まずは2週間通ってみなさい」と、言っていただいて研修が始まりました。
 
 
 

■研修はいかがでしたか。また、どんな勉強をすれば彩色技術員になれるのでしょう。

  絵の具を練って作るなど、あらゆる作業が新鮮で毎日本当に楽しかったです。ある時、親方から大きな石の塊のようなものを「それ国宝だから」とボンと渡されたことがあります。「失敗しても直すのがおれの仕事だから、とりあえずやってみろ」と、大猷院にある波の彫刻の彩色をさせてもらったこともありました。
特別な勉強というよりは、美術館や博物館に行ったり美術書を読んだりしていました。時間を見つけては絵を描いていたと思います。「余計な知識がなくまっさらな状態が良かった」と、周りから言っていただくこともあります。

■保存会で初めての女性彩色技術員となり、ご苦労されたことはありましたか。
男女の隔たりなく、親方や先輩から本当にかわいがってもらいました。もちろん重たいパイプを運んだりすることもありますが、体力的に男性に劣っていると感じたこともありませんし、職場の人間関係が良く、環境に恵まれていると思います。現在では女性技術者も4人に増えました。

■やりがい、仕事で心掛けていることは。
 やりがいは貴重なものに直接触れて修復し、前の職人さんの技術を学べることです。髪の生え際や眉毛の細い線一本一本の描き方だけを見ても思わず「うまいな」と、うならせられます。
私たちの仕事はあくまで「修復」です。昔から受け継がれてきた技術を後世に伝えていくため、自己流にならないように努めています。これが案外難しいんです。当たり前のことですが、きちんとした仕事をして、親方や先輩たちの教えを後輩に伝えていきたいです。

■県民へのメッセージをお願いします。
県内や地元の方は、「いつでも行ける」「一回行ったから」と日光に足を運ぶ機会が少なくなりますが、東照宮はもちろん、輪王寺や二荒山神社、大猷院など素晴らしい建物がたくさんあります。自分で調べたり、案内さん(案内人)にお願いしたり、ゆっくり観賞してほしいですね。

安達千恵子(あだち・ちえこ) 1976年日光市(旧今市市)生まれ。今市高校卒業後、公益財団法人日光社寺文化財保存会で数年の研修期間を経て彩色技術員となる。


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