
国内の死亡原因の約3割を占める「がん」から命を守るためには、生活習慣の改善(一次予防)と、早期発見、早期治療につながる検診(二次予防)が不可欠です。小金井中央病院(下野市)の田中昌宏理事長に、がんの予防法や最近のトピクスを聞きました。
—がん予防のために日常生活で特に注意すべきことは何ですか。
まず何と言ても、発がん性物質を多量に吸い込むことになる喫煙を一日も早くやめることです。食生活では、野菜や果物を多く食べて、獣肉の摂取を減らすこと。一日400㌘以上の野菜を摂取している人に大腸がんが少ないというデータがあります。私たちの体は一日に体重1㌔㌘当たり1㌘のたんぱく質を必要としますが、その半分を大豆、四分の一を魚で摂り、獣肉は残り四分の一に抑えることをお薦めします。酒の飲み過ぎや運動不足も危険因子です。また、胃がんの原因となるピロリ菌については、今年の2月から内視鏡検査で萎縮性胃炎があれば、ピロリ菌の有無を調べることや除菌に保険がきくようになりました。胃がん予防のために、積極的に除菌してほしいですね。
—がん検診の受診率の低さが問題になています。
「症状がないから」と受診しない人が多いようですが、がんの場合、症状が出てからでは手遅れとなるケースが多いのです。さらに、検診で「精密検査が必要」と診断されても精密検査を受けない人が多い現状は非常に危険です。私の病院での調査ですが、大腸がん検査の便潜血反応で「陽性」と出た881人に大腸内視鏡検査を行たところ、25人(2・8%)にがん、468人(53%)にがんに悪化することもある大腸ポリープが見つかりました。半数以上が「がん予備軍」だったというこの結果からも、検診と精密検査の重要性が分かります。
—読者にアドバイスをお願いします。
胃がんや大腸がんは早期発見すれば、ほぼ100%治ります。40歳を過ぎたら年に1回は検診を受け、「要精検」と判断されたら必ず精密検査を受けてください。自分の命は自分で守るという自覚が大切です。たなか・まさひろ 日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会指導医、日本大腸肛門病学会指導医。栃木県医師会常任理事。