
全国で寝たきりなど「要介護」と認定されている高齢者の7割超が女性です。女性には特有の疾病や健康問題があり、介護を必要とせず自立した生活を送れる期間の「健康寿命」を延ばすためには、性差を考慮した健康づくりが重要になります。獨協医科大産科婦人科の望月善子教授に、女性特有の健康問題や日常生活における注意点などを聞きました。
健診で異常の—女性の健康寿命を延ばす上で重要なポイントは何ですか。
記憶や認知の機能をつかさどり、骨量のコントロールやコレステロールの代謝などにも密接に関わっている女性ホルモンの「エストロゲン」が重要です。女性は閉経ごろから、エストロゲンの分泌が減少していき、高齢者では男性より分泌量が少なくなります。このため、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や、骨の密度が低下して骨折しやすくなる骨粗しょう症、認知症など、女性ではさまざまな病気のリスクが高まるのです。実際、女性が要介護となる原因疾患では、骨折、転倒と関節疾患を加えた運動器疾患が第1位で、第2位は認知症です。
閉経後も女性の人生は約35年も続きます。この期間を健康に、幸せに過ごすためには、さまざまな疾病のリスクを見逃さずに対処することが大切です。更年期を迎えたら定期的に健康診断を受け、血圧や血糖、骨量などをチェックすることをお勧めします。もし何か改善点が見つかった場合は、早期に治療を受けてください。
—更年期には、日常生活でどのような点に気をつければよいのでしょうか。
基本はバランスのよい食事と運動を継続して行うことです。毎日の食事でしっかりカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを摂取しましょう。また骨折を予防するには、骨だけでなくこれを支えている筋肉が大切なので、筋力を鍛えるために毎日の歩数を増やすなど適度な運動習慣を身につけることも欠かせません。
更年期障害の症状が重いのであれば、エストロゲンを外から補う「ホルモン補充療法」があります。骨粗しょう症の予防や治療にも有効ですが、デメリットもあるので医師と十分相談してください。
—読者へのメッセージをお願いします。
現在、ご両親や義父母の介護をされている更年期の女性は多いと思います。介護や家族の世話などに追われ、ご自分の健康のことはつい後回しにしがちですが、更年期は、心身ともに健康の曲がり角であり、健康寿命の延伸に関わる重要な時期であるということを強く認識していただきたいですね。そして、異常を感じたら決して我慢をしないこと、定期的な健診をぜひ心掛けてください。
望月善子(もちづき・よしこ) 獨協医科大産科婦人科教授、女性医師支援センター長。医学博士。鳥取大医学部卒。大阪大医学部産科婦人科教室、仏クロードベルナール大留学、獨協医科大産婦人科准教授などを経て現職。