宇宙から気候変動対策 JAXA理事寺田氏が講演 人工衛星の活用例紹介

 下野新聞社の会員制組織「しもつけ21フォーラム」の9月例会が21日、宇都宮市内で開かれ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事の寺田弘慈(てらだこうじ)氏(61)が「衛星データ利用と人工衛星最前線~SDGsから『はやぶさ2』まで~」と題して講演した。地球温暖化や災害の対策に役立つ地球観測衛星のデータのほか、活用事例を紹介した。

 地球観測衛星は、大気や海洋など地球環境を長期的に監視する目的で打ち上げられた人工衛星。JAXAは9月現在、6基を運用しており、温室効果ガスや海面水温、降水の状況などの観測を続けている。

 寺田氏は「観測データの10年間の推移を見ると、温室効果ガスの増加傾向が見て取れる」と解説。北極海の海氷面積や海面の水温なども取り上げ「地球の温暖化は衛星からよく見ることができる」と説明した。

 持続可能な開発目標(SDGs)について「気候変動対策や海の豊かさを守るゴールに向け、人工衛星の地球観測活動は直接的に貢献できる」と強調した。

 また、日本で初めての月面着陸を目指す小型探査機「SLIM(スリム)」の取り組みや、内閣府が運用する測位衛星「みちびき」の活用事例についても紹介した。

 寺田氏は新潟市出身。東京大工学部航空学科を卒業後、宇宙開発事業団(現JAXA)入社。「みちびき」のプロジェクトマネージャなどを歴任し、2020年4月から現職を務める。