収益の下地づくり重要 菅野前JA全中副会長理事 海洋放出の影響懸念

 下野新聞社の会員制組織「しもつけ21フォーラム」の8月例会が24日、宇都宮市内で開かれ、全国農業協同組合中央会(JA全中)前副会長理事の菅野孝志(かんのたかし)氏(71)が「私と協同組合」と題して講演した。

 菅野氏は、農業や農村、JAは農業者の減少など多くの危機にひんしていると説明した。一方、農村に戻りたいと考える若者が増えているとした上で「農業をやれればいい、という思いだけでは長続きしない。若者が農業に挑戦し、もうかる下地をつくらなければ定着しない」と強調。地域農業の存続へ向け、「地域の多くの人が農業を応援する環境をつくることが重要だ」と指摘した。

 食料自給率の向上も課題に挙げ、「国家戦略として国民を挙げて取り組むべきだ」と訴えた。

 福島県出身の菅野氏は、東日本大震災後、地元福島で風評被害対策にも当たった。質疑応答では、政府と東京電力が同日、福島第1原発の処理水の海洋放出を始めたことについて懸念。既に水産物の輸出が滞るなど影響が出ていることから「国は明確に方針を示して対策に取り組むべきだ」と求めた。

 自身の経験を踏まえ、「風評被害は(福島第1)原発がなくならない限り消えない」と強調し、「対応できることは精いっぱいやっていきたい」と述べた。

 菅野氏はJA福島中央会長などを務めた。2020年、JA全中副会長理事に就任し、今月18日に退任した。