1千年の眠りから覚めた高さ9センチほどの小さな金銅仏が、照明を受けて神々しいばかりの輝きを見せている▼昨年、県道拡幅工事に伴う調査で、真岡市石島のくるま橋遺跡の中の、11世紀(平安時代)の竪穴住居跡から出土した。下野市の県埋蔵文化財センター展示室の中央に鎮座し、今月末まで開かれている発掘調査速報展の目玉の一つである▼10世紀に鋳造されたと考えられる阿弥陀如来坐像(ざぞう)。表面に漆を塗り、金箔(きんぱく)を押して仕上げた精巧なもので、地元ではなく畿内で作られた可能性が高い。先日、同センターで特別講演した青山学院大の浅井和春(あさいかずはる)名誉教授は、この金銅仏には謎が多いと指摘した▼寺院跡や経塚、山岳霊場からの出土が大半だが、どれにも当てはまらない点で珍しい存在という。顔は整い、厳しさの中に温和さが認められる洗練された作風で、「かなり格の高い僧侶が携帯用として持ち、地方への信仰布教のために使ったのかもしれない」と見立てた▼ゴボウ畑の中の遺跡から出土したのにもかかわらず、原型を留めたのも幸運だったという。土を深く掘り下げる収穫の過程で遺跡が壊されていた可能性もあり、発見自体が奇跡だったというのだ▼関係者からは「国の重要文化財級では」との声もある。こうしたエピソードを聞くとありがたみが一段と増してきた。