日本美術院が主催する公募展は「再興日本美術院展覧会(院展)」と「春の院展」の二つがある。春の院展は、終戦後間もなく東京・日本橋三越で試作展覧会として始まった▼さくら市ミュージアム-荒井寛方(あらいかんぽう)記念館で「第73回春の院展栃木展」が開かれている。先日の開幕式で同院の田渕俊夫(たぶちとしお)理事長は「戦争で日本が焼け野原になっても人々は美術を求め、春の院展が始まった」と来歴を紹介した▼秋の開催なのに春と称するのは、毎年4月頃から都内でスタートして各地を巡回するため。「院展」と比べて作品が小ぶりなのは、成り立ちの経緯や研究会としての役割があるからだという▼同ミュージアムでの展示は、さくら市出身で日本美術院同人として活躍した荒井寛方の縁によるもので今年で4度目となる。応募811点の中で入選は327点。このうち90点が展示され、本県関連作家は岸野香(きしのかおり)さんら5人がいる▼開幕式後の田渕理事長自身による作品解説が面白かった。タイトルは「明日香心象 寒月」。恋人の元に急ぐ若者の行く手を月が明るく照らす風景を心象として描いたという。「絵は見方、考え方、その人のその時の気持ちで受け止め方も変わる。それを楽しんで」とも▼岩絵の具や金箔(きんぱく)など多彩な画材の説明にも引き込まれ、美しく繊細な日本画の奥深さを堪能した。