鹿沼市の県道で6月、乗用車4台が衝突し2人が死傷した多重事故で、運転に支障を及ぼす恐れのある持病があったのに運転免許更新時に虚偽の申告をしたとして、県警は9日、道交法違反(質問票の虚偽申告)などの疑いで、事故を起こし死亡した同市、会社員男性=当時(34)=を容疑者死亡のまま書類送検した。病状の虚偽申告の罰則は、2011年の鹿沼6児童死亡事故遺族の署名活動がきっかけで新設された。「罰則は抑止のためなのに」「ルールを守ってほしかった」。遺族は悔しさとやりきれなさをにじませた。

 書類送検容疑は、男性が運転に支障を及ぼす可能性のある持病を抱えていたのに、15年の運転免許更新時に、病状などを回答する質問票にうその記載をして、虚偽申告した疑い。

 男性は6月25日午後2時ごろ、鹿沼市上野町の県道で乗用車を運転中、信号待ちの無職女性(65)の車に衝突し、弾みで前方の車2台にもぶつかった。男性は胸を強く打つなどして死亡。女性も重傷を負った。

 捜査関係者によると、男性は長年持病を患い薬を服用。主治医から「車をできるだけ運転しないように」と指導されていたという。

 「なぜ虚偽の申告をしてしまったのか」。6児童死亡事故で小学6年生だった次男卓馬(たくま)君=当時(11)=を亡くした父大森利夫(おおもりとしお)さん(53)は疑問を口にした。

 登校中にクレーン車にはねられ、命を奪われた6児童。持病を隠し服薬を怠った男の運転が原因だった。

 事故後の署名活動で全国の約20万人分の署名を国に提出。病状を虚偽申告した場合、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」との罰則規定が設けられた。

 「虚偽申告がないようにと願って、抑止力として作られた罰則なのに」と利夫さんは悔やんだ。