お茶の季節といえば多くの人が、新茶が出回る5月ごろをイメージするのではないか。10月に「日本茶の日」が2回あることを知った時には、いささか驚いた▼きょう31日は、鎌倉時代の禅僧栄西(えいさい)が中国(宋)から日本茶の元となる茶種や入れ方を伝えた日だという。800年余り前には、苦さのため薬として広まったとか▼「茶は養生の仙薬であり、人の寿命を延ばす妙術を備えたもの」。栄西が茶の効能を記した「喫茶養生記」のくだりである。二日酔いに苦しむ3代将軍源実朝(みなもとのさねとも)に、一服の茶とこの本を献じたという記録も残る。深酒の翌朝に苦い茶が欲しくなるのは今も昔も変わらない▼もうひとつは、豊臣秀吉(とよとみひでよし)が京都で「北野大茶会」を開いた10月1日である。庶民も外国人も身分を問わず参加できたため、お茶を広めた日、とされる▼日本の食卓に欠かせない存在である茶の産地として、本県では黒羽茶の大田原市や板荷茶の鹿沼市が知られる。「深み、渋み、甘みのバランスがよく飽きのないうまさがある」。こう話す鹿沼市茶振興連絡協議会の小池正昭(こいけまさあき)会長は、静岡や狭山といった全国的な産地にも引けを取らない、と胸を張る▼だが、東京電力福島第1原発事故の風評被害は今も収まらない。秋の夜長、地元の味を楽しみながら、日本茶の奥深さを改めて感じてみたい。