数字が時代の転換点を表す場合がある。例えば「1・57ショック」だ。1989年、1人の女性が生涯に産む子供の人数を示す合計特殊出生率が過去最低を記録。少子化が平成の時代を象徴する言葉になる▼「1・5」も歴史に深く刻まれるのだろうか。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書に盛り込まれた数字である▼2030年にも世界の平均気温が産業革命前よりも1・5度上昇する恐れがある。影響は深刻だ。猛暑や豪雨が増加し、自然災害が多発する。2度上昇した場合は、海面は1・5度に比べて10センチ高くなる▼その数字から、キリバス出身の重量挙げのデービッド・カトアタウ選手(34)の顔が浮かんだ。試合でちゃめっ気たっぷりな踊りを披露することで知られている▼キリバスは赤道付近にあり、サンゴ礁の島々からなる。山はなく、平均海抜は2メートルほど。地球温暖化で高潮被害や海岸浸食が頻発している。カトアタウ選手の自宅も約3年前、大波で海のもくずと消えた。踊る理由は明快だ。勇を鼓して、沈みかねない島の現状を世界中に知らせたかったからという▼キリバスに日本として何ができるか。コインの表と裏のように、いつか同じ島国の日本も援助を求める側になるのでは。「1・5」という数字の持つ意味は果てしなく大きい。