作家の落合恵子(おちあいけいこ)さんは、認知症を患い要介護度5となった母親を7年間にわたって介護した体験がある。その間の出来事をつづったのが「母に歌う子守唄~わたしの介護日誌」だ▼執筆や講演などの仕事をしながらの介護の日々。母親への愛情とともににじむのがこの国の介護を巡る厳しい現実だ。著書の一節にこうある▼「自分たちで介護をという人たちが、やむを得ず退職したり、退職はしたものの(中略)最悪の場合は共倒れ、無理心中といった、決して『どこかの不幸』ではない現実を、わたしたちはいま抱えている」▼母親をみとったのは11年前のこと。だが今も状況は大きく変わらないのではないか。先日の小紙に家族の介護や看護のために仕事を辞める「介護離職」が、県内で2017年に1100人に上ったとの記事が掲載された。政府が掲げる「介護離職ゼロ」の実現にはほど遠い現状がある▼認知症の人と家族の会県支部世話人代表の金澤林子(かなざわしげこ)さんは実母と義父母の3人を介護してきたが、仕事は歯を食いしばって続けたそうだ。だが、会員の中には離職に追い込まれた人が何人もいるという▼金澤さんは「認知症になっても介護する側になっても地域で暮らし続けられる社会を目指したい」と話す。そのための大前提が離職ゼロの早期実現であるのは疑う余地はない。