住民参加で獣害防ぐ 塩谷・栃木県モデル集落

 県内でイノシシやシカなど野生鳥獣による農作物被害の拡大が止まらず、農村住民の悩みが続いている。2016年度の被害額は3億8千万円超で3年連続で増えた。県はモデル指定した集落に専門知識を持つ鳥獣管理士を派遣する獣害対策事業を行っており、17年度から拡充する。住民参加で被害軽減を目指す取り組みが奏功する地域も出始めた。

 「水田に植えたばかりの苗を何度も食べられた」「夜道は獣と出くわすので、出歩くのが危険だった」

 塩谷町船生の山林に隣接する羽谷久保(はねやくぼ)、百目鬼(どうめき)両集落。集落で獣害対策委員長を務める農業斎藤国雄(さいとうくにお)さん(65)と、同斎藤義雄(さいとうよしお)さん(65)は振り返る。

 獣の侵入ルートを把握するため集落各所に設置した監視カメラには、イノシシの列や跳びはねるシカ、民家のすぐ裏を堂々と歩くクマが映っていた。わなだけでは対応しきれない状況になっていた。

 町は被害軽減につなげようと県のモデル事業に名乗りを上げ、15、16年度、両集落で住民参加の防護対策に乗り出した。鳥獣管理士の斎藤悦夫(さいとうえつお)さん(67)の助言の下、学習会などを経て設置した防護柵の延長は羽谷久保5キロ、百目鬼7キロにもなる。

 柵はメッシュ型のフェンスなどで、設置作業は16年秋から今年3月末までの毎週土、日曜日に行い、住民は農家、非農家に関わりなく参加した。

 柵を設けるルートは起伏のある山林内。

 柵設置以降、獣の農地への侵入はなくなった。県猟友会塩谷支部塩谷分会の渡辺肇(わたなべはじめ)会長は「かつてはわなに1日2、3頭は掛かっていたが、監視カメラにも映っていない」。

 獣害対策は別の効果も生んだ。住民は「共同作業を通し、集落の連帯意識が高まった」と口をそろえる。不耕作地を夏イチゴの生産に活用しようとのアイデアが出てくるなど生産意欲も高まりだした。