毎年の「勤労感謝の日」に、社員と家族を本社に招き、昼食会やインフルエンザの予防接種を行っている食品メーカーがある。経費はすべて会社持ち。「採算はとれるのか」という質問に、担当者は「それで欠勤者が減るのだから、最終的にそろばんは合う」と笑って応じた▼近年、経営上の新たな概念として注目を集める「健康経営」の一例である。宇都宮大で先日開かれた「とちぎ地域・森づくりフォーラム」で、県内事業所の産業医を務める杉沢誠祐(すぎさわのぶすけ)さんが紹介した▼フォーラムの資料には、この手法は「従業員の健康維持、増進に取り組むことで会社の業績を向上させる」とある。出席者からは、心と身体の健康にもたらす森林浴の効果の大きさを指摘する声も上がった▼例えば、長野県に社有林を持つある大手企業。社員研修の場を都内から森林に切り替えた結果、早期離職率が12%から1%に低下したという▼政府が昨年3月に決定した「働き方改革実行計画」工程表では、職場環境の整備の具体例として「森林空間における保養活動」が明示された。健康維持には癒やしが欠かせないということだろう▼今年の異常気象を持ち出すまでもなく、温室効果ガスの排出削減や災害防止を図る森林の整備は不可欠である。健康づくりという目的も加われば、その重要性はさらに増す。