ハリウッドに象徴される米映画界は社会の多様性を尊重し、少数者や弱者の権利を擁護するリベラルな価値観の体現者の役割を果たしてきた。有名俳優が歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで政治権力を酷評することも少なくない▼昨年、女優メリル・ストリープさんが大統領就任前のトランプ氏の差別的言動を「胸が張り裂けそうな思い」と非難し「軽蔑は軽蔑を呼び、暴力は暴力を生む」との名言を残したのは語り草だ▼社会的リスクを伴う政治論争もためらわない米国に比べ、政治の動向に沈黙しがちな日本の芸能界。何とも味気なく、米国の俳優と比較すると残念にすら思えてしまう▼都内での反核市民集会で、壇上から響く大物女優の訴えに驚き、その魂の叫びに感銘を覚えた。「悩みに悩んでやって参りました」と切り出したのは吉永小百合(よしながさゆり)さんである。原爆関連の映画3本に出演し峠三吉(とうげさんきち)の「原爆詩集」などの朗読活動を30年以上続けてきた▼「大きな声を政府に届けて、条約を批准して核兵器のない平和な世界をつくっていくことが大事」。吉永さんは核兵器禁止条約への賛意を示しながら、条約に背を向ける安倍政権をチクリ。唯一の被爆国が「核の傘」から脱却する必要性にも触れた▼核の残忍さ、戦争の悲惨さ、命の大切さ…。ハリウッドだけに体現者を任せていてはおられない。