シニア世代の生活実態をジェンダー(社会的性差)の視点から探る下野新聞社アンケート最終回のテーマは年金。女性の方が男性より「家計にゆとりがない」「家計はかなり苦しい」とする回答が多く、高齢女性の経済的な逼迫(ひっぱく)が浮き彫りとなった。専門家は女性の就労環境改善による男女の賃金格差是正の必要性を訴えている。

 20歳以上60歳未満の全国民が加入する「国民年金」と会社員や公務員が加入する「厚生年金」の2階建て構造となっている日本の公的年金。加入状況を聞いたところ、国民年金のみに加入している人の割合は男性では13%だが、女性では34%に上った。

 家計の実態について「貯蓄や家族の支援もあるが、家計にゆとりはない」「年金だけで、家計にゆとりがない」「年金だけで、家計はかなり苦しい」と回答した人の割合は男性51%、女性61%で、女性の方が経済的な不安を抱えていることが分かった。

 「国民年金だけなので、もう少しゆとりがほしい」(70代女性)、「厚生年金の格差が大きい。そもそも男女の給与格差が大きく、改善すべき点が大」(70代男性)、「女性への支給額が少ない。公的支援が必要」(70代男性)と男女の格差を指摘するコメントが多く見られた。

 背景にあるのは、シニア世代が現役で働いていた時代の「男は仕事、女は家庭」という社会通念。80代女性は「在職中の仕事の内容により(男女の年金格差は)やむを得ない」と諦めの声を寄せた。

 こうした現状を踏まえ、「平等になるように働き方を改革してほしい」(70代女性)といった要望も複数。70代男性は「女性の社会進出が加速しているので将来的に差は縮まるのでは」と今後に期待した。

改善へ就労環境整備を 高齢期の貧困防止を訴える 日本福祉大・藤森克彦教授

 社会保障政策が専門の日本福祉大福祉経営学部の藤森克彦(ふじもりかつひこ)教授(58)は年金受給額の男女格差について「男女の賃金格差を反映しており、女性の就労環境を整えることで改善が可能だ」と解説する。

 公的年金の2階部分に当たる厚生年金の受給額は、保険料の納付期間や収入によって決まる。労働時間が週30時間未満の場合は、雇用見込み期間や賃金額など加入自体に一定の条件を満たす必要がある。

 日本の働く女性の正規雇用比率が20代後半をピークに低下する「L字カーブ」が課題となる中、藤森教授は「出産や介護などキャリアの断絶による賃金の低下が公的年金受給額の低下に直結している」と説明する。

 定年延長や継続雇用など制度の充実を背景に働く高齢者は増加しているが、2022年国民生活基礎調査によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち公的年金・恩給が総所得の全てを占める世帯は44%にもなる。公的年金は依然、老後の生活の資金のベースとして欠かせない。

 藤森教授は非正規労働者らに厚生年金の適用を拡大する近年の制度改革にも触れ、「持ち家の有無など年金だけで語れない部分もあるが、高齢期の防貧のためにも必要な取り組みだ」と強調した。