四方を山林に囲まれた県内最北の無人駅と言えば、どこか物寂しさが漂う。そこにあった築98年の駅舎が今夏、大正、昭和、平成にわたった歴史の幕を閉じた▼那須町豊原甲のJR東北線豊原駅舎の建て替えが進んでいる。旧駅舎は県内有数の古さだったが老朽化のため、やむなく取り壊された▼周辺には民家も自動販売機もない小さな駅だが、通学、通勤者にはかけがえのない存在だ。「古かったけど好きだったので寂しい」。同町黒田原小4年の津田晴也(つだせいや)君(10)は、毎朝通った旧駅舎に思いをはせる▼小学生は地元にあった成沢小が閉校した1974年以降、隣駅への通学が続いている。30人ほどの通学者のうち、10人いる小学生の階段昇降や乗車に付き添うのが、近くに住む農業磯由起子(いそゆきこ)さん(59)だ▼毎日の交通指導員を務め18年目になる。子どもたちのため、いくつも施設改善を駅側に要望し、実現に結びつけてきた。駅舎内の清掃や階段の雪かきに汗を流したこともある。駅舎には人一倍の思い入れがある。それでも今は「廃止の不安もあったのに新築とは。気持ちよく登校できるようになるでしょう」と、子どもたちの使い勝手の良さに期待する▼来年2月に完成する新駅舎の外壁には、町の花であるリンドウがあしらわれる。山々の緑に新たな彩りを添えてくれるはずだ。