「世界は一冊の本にして、旅せざるひとびとは本を一頁(ページ)しか読まざるなり」。古代の思想家アウグスティヌスの言葉である。旅はまだ見ぬ景色と見知らぬ人々との出会いをもたらす。書物のように啓蒙(けいもう)してくれる▼岐阜県飛騨市を拠点に活動する旅行会社「美ら地球(ちゅらぼし)」。どこにでもありそうな里山をサイクリングで回るツアーが、外国人に受けている。世界屈指の旅行口コミサイトで満足度100%を獲得する快挙を成し遂げたそうだ▼都内であった全国町村会主催のシンポジウムで、同社最高経営責任者(CEO)の山田拓(やまだたく)さんが「観光・交流とインバウンド(外国人誘客)」と題して人気の背景を説いた。インバウンドが農山村振興の可能性を引き出すヒントが随所にあった▼ガイドと連れだって巡るのは田んぼだったり、民家だったり。コメ作りの詳細を解説し、人々の暮らしぶりを紹介する。黄色の帽子をかぶりランドセルを背負った子どもたちと触れ合うだけで、多くの外国人は大喜びする▼名所旧跡はあえて避けるという。「関西で堪能しているから」と山田さん。ありふれたと思い込んでいる地域資源が外国人にはこの上ない魅力に映る▼飛騨と遜色ない里山が県内のあちこちに広がっている。親切な住民も数多くいる。アイデアとやる気一つで、地域振興の種は大きく育つ。