〽雲が飛ばされて 月がぽっかりひとり言 こんな夜は昔 ほうきに乗った魔法使いの…。吉田拓郎(よしだたくろう)さんの楽曲「伽草子(おとぎぞうし)」の一節である。月はなぜこうもメルヘンの世界が似合うのだろう▼米国の宇宙ベンチャー「スペースX」が開発中の大型ロケットで、月の周囲を飛行する月旅行の初の契約者が、通販サイト「ゾゾタウン」の運営会社社長前沢友作(まえざわゆうさく)さんだと、先日の小紙が伝えた。費用は未公表だが、巨費に見合う魅惑の体験となるのは間違いない▼庶民には途方もない夢の旅行であり、前沢さんとは文字通り「月とすっぽん」。月はあくまで地上から眺めてこそ美しいと自らに言い聞かせるしかないか。きょう24日は中秋の名月である▼古来、月を祭る日とした中国の観月の風習が渡来したそうだ。今も廃れてきたとはいえ、団子やサトイモ、ススキをお供えしている家庭もあるだろう。本県独自の習わしとして、けんちん汁をこしらえ翌日に団子を入れて食したという▼県内でほそぼそと続けられている行事に「ボウジボ打ち」がある。子どもたちが稲わらを束ねたボウジボを地面にたたきつけながら集落を回り、豊作を願う。いつまでも残したい習俗だ▼心配なのがこよいの天気。名月が見えぬなら、そば、うどんのどんぶり鉢を夜空に見立て、卵を落とした「月見」を楽しむか。