世界屈指のサッカーのまちである英国マンチェスターは、18~19世紀に起きた産業革命の舞台としても知られる。紡績機に蒸気機関が導入されたり、港町のリバプールとの間に鉄道が開通したりして、マンチェスター産の綿織物は世界中に輸出された▼「両毛の足利、佐野などはわが国のマンチェスターなり」。近代産業発祥の地になぞらえ、県議会などで鉄道敷設を訴えたのは、経済学者で両毛鉄道初代社長の田口卯吉(たぐちうきち)である▼両毛の織物産地を東京や横浜に直結させたい-。そんな地元経済界の夢が結実したのは1888(明治21)年だった。足利駅で行われた開業式では、花火が打ち上げられたほか競馬も催され、「近年になき大にぎわい」と当時の新聞は報じた▼経営が行き詰まり、小山-前橋の全線が日本鉄道(現JR)に引き継がれたのは、その9年後である。それに伴い会社の幕も閉じたが「足利繊維の繁栄は、両毛鉄道が開通したからこそ」と関係者は話す▼開業から今年で130年。両毛線の乗客の多くは沿線の学校に通う学生という。利用者増には沿線都市の魅力アップも欠かせない▼繊維業の衰退を乗り越え「北の首都」と称されるマンチェスターは、スポーツや文化都市としても名をはせる。かつて両毛の将来像を重ね合わせたかの地に、もう一度あやかりたい。