インバウンド(訪日外国人客)の急増でにぎわう那覇市の中心街から車で15分ほどで、豊見城市の旧海軍司令部壕(ごう)に着く。この戦時の地下坑に入ると、タイムスリップした錯覚に陥る▼第2次世界大戦末期の1945年6月、米軍の猛攻で孤立した旧海軍の大田実(おおたみのる)司令官はここで自決。その直前、海軍次官宛てに遺言の電報を送った▼「沖縄県民斯(か)ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜(たまわ)ランコトヲ」。大規模な地上戦が繰り広げられ、県民の4人に1人に当たる12万人が命を落とした。集団自決に追い込まれた住民も数知れない▼沖縄は30日投開票の知事選を控える。翁長雄志(おなが・たけし)前知事の死去に伴う戦いは、安倍政権が支援する佐喜真淳(さきま・あつし)前宜野湾市長と自由党前衆院議員の玉城(たまき)デニー氏の事実上の一騎打ちに▼注目は普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設問題。佐喜真氏は「普天間飛行場の危険性除去と一日も早い返還」を主張するが、辺野古移設の是非は明言せず。玉城氏は翁長氏の後継として「翁長氏の遺志を引き継ぎ阻止を貫徹する」と訴えている▼安倍政権は「辺野古移設が唯一の解決策」の一点張りで、知事選後にも移設工事を再開する構えだ。あの惨事から73年。「後世特別のご高配を」の遺言と対照的に、沖縄には今も戦後の負荷が重くのしかかる。