宮大工、大工を指導する大関さん(右)

自作の短歌を書きためたノートを手にする加藤さん

宮大工、大工を指導する大関さん(右) 自作の短歌を書きためたノートを手にする加藤さん

 17日は「敬老の日」。高齢化が進む中、元気なお年寄りの姿は社会に活気を与える。県内で宮大工や大工に匠の技を伝授する男性、感性豊かな短歌作りを楽しむ女性を紹介する。

■次代に伝える匠の技 壬生町 大工 大関雄市さん(88)

 壬生町上田、自宅隣の作業場には大関雄市(おおぜきゆういち)さん(88)の指導を受ける宮大工や大工が顔をそろえる。「細かく精密な大関さんの技は芸術品。何とか技を盗みたいという大工5人が集まっている」と県建設業協会副会長の坂本邦男(さかもとくにお)さん(73)は説明する。

 大工だった父親弥一郎(やいちろう)さんの後を追ったのは15歳の時。55年間一般住宅などの建築に携わった。70歳を迎えて五重塔のミニチュアや神棚などを作り始めた。「現役を退いて、好きなものを作ってみたかった」という。

 山梨県の身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)内にある五重塔を再現した作品は公民館で特別展示され、多くの人でにぎわった。実物の20分の1に仕上げた五重塔は高さ約2メートル、重さ約60キロ。作業はカンナなどを使う手作業で、接着剤は極力使用せずに木を組み込んで仕上げ、制作に約1年間を費やした労作だ。

 宮大工宮山太一(みややまたいち)さん(35)=鹿沼市御成橋町1丁目、大工歴53年の高買博(たかがいひろし)さん(69)=同市上永野=は「細かさ、曲線の美しさ、全体のバランス。何をとっても素晴らしい。足元にも及びません」と声をそろえる。

 これまでボランティアで修理などしてきた多くの寺院や神社から感謝状が贈られた。「目も、細かい作業も大丈夫。まだまだ頑張ります」。老いはまったく感じられない。

■明るい作風生きる力 鹿沼市 歌人 加藤泰さん(91)

 短歌は自分の分身のようだという。鹿沼市口粟野、加藤泰(かとうたい)さん(91)は、その時々の思いや情景を歌にする。「頭の中で一首にまとまると、ああそうだと納得して心が落ち着くの」。日常生活から作品は自然に生まれてくる。

 60代まで家族の介護などで多忙な毎日を送り、楽しみは新聞の文芸欄を読むことだった。70代から短歌を作り始めたが、結社には所属せず独力で学んできた。平易な表現を心掛け、ありのままの自分を表現する。

 本紙「しもつけ文芸」に掲載された作品は500首を超す。この7月には上半期最高賞の前期賞に輝き、選者の星野清(ほしのきよし)さんから「感性の瑞々(みずみず)しさは年齢を感じさせず、まだまだ今後を期待させる」と評された。

 詠みためた短歌をまとめた大切なノートを見せてもらった。丁寧な字で一首一首書き込まれている。「九十の吾を祝ふと甥のくれし紅胡蝶蘭今日も華やぐ」。昨年、卒寿を迎えた時に詠んだ歌だ。

 自宅の裏の畑で野菜作りに励みながら、穏やかな日々を過ごす。高齢のため体調を崩したり、気持ちが落ち込んだりすることもあるが、明るい作風を目指す。「短歌に生きる力をもらっている。これからも共に歩みたい」と前を向く。