場内を一周しファンの声援に答える栃木GBの村田=9日午後5時25分、小山運動公園野球場

 これまで決して口にしなかった「引退」の二文字を告げようとした瞬間、あふれる感情が込み上げた。NPB(日本野球機構)の横浜(現DeNA)と巨人で活躍し、栃木ゴールデンブレーブス(GB)の顔として1年間プレーした村田修一(むらたしゅういち)選手(37)。NPB時代に2度の本塁打王を獲得。「男・村田」と呼ばれ多くのファンや仲間に慕われた強打者は、栃木の地で16年間のプロ生活に別れを告げた。

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 最後の勇姿を目に焼き付けようと、詰め掛けたファンは6025人。その人望の厚さを示すように、阿部慎之助(あべしんのすけ)(39)、坂本勇人(さかもとはやと)(29)ら巨人の現役選手らの名が記された花のプレートなど数多くの花やメッセージが届けられた。

 「引退試合」も定位置の「4番・サード」で先発出場した。現役最後の打席は九回裏無死一塁。サヨナラ本塁打を期待するファンの大声援の中、外角の変化球を右に転がす進塁打で一塁に全力疾走。代名詞の豪快なスイングではなかったが、最後まで勝利のためのプレーにこだわった。

 今年3月に栃木GBに入団。60試合に出場し打率3割4分2厘、14本塁打、62打点の成績を残した。若手の手本となる一方で自らも若手から刺激を受けた。

 引退スピーチでは感謝の言葉を並べた。「30年間の野球人生に悔いはない。本当に楽しい現役生活を送ることができた」。所属した3球団のユニホームを着た3人の息子から花束を受け取り、「これからは父親の役割を全うしたい」と優しいまなざしを向けた。

 セレモニーの最後にナインの手で宙を舞い、場内を一周してファンに手を振り続けた村田選手。「人生これから。前を向いて僕らしく進んでいきたい」。誰よりも野球に真摯(しんし)に向き合った「背番号25」は、多くの愛に包まれながら第二の人生へ一歩を踏み出した。(下野新聞ホームページ「SOON」に引退スピーチ全文を掲載)