風のように現れた助っ人は風のように去った。

 8月中旬、栃木SCが元スロベニア代表FWネイツ・ペチュニクの退団を発表した。折しも昨季J1の新潟相手にアウェーで3-0と完勝した直後。上位浮上へ、さらなる団結が求められた時期だけに予想外だった。

 ペチュニクは昨年8月に当時J1の大宮から加わった大型ストライカー。2010年ワールドカップ南アフリカ大会に出場し、セルビアの名門クラブ「レッドスター・ベオグラード」でもプレーした実力者だった。

 「世界基準」を肌で知る男は、当然のことながら栃木SCに違いをもたらした。後半戦から出場すると、4試合目の第22節鹿児島戦でハットトリック。ハイライトは最終節の沼津戦。0-1で迎えた後半32分に左足で起死回生の同点弾をねじ込み、クラブを3季ぶりのJ2復帰に導いた。

 サッカーと向き合う姿勢はプロそのもの。ピッチ上では闘争心むき出しにボールを追い続けた。出場機会を失いつつあっても腐るそぶりなど見せない。「楽しかった。こういう選手になりたい」。FW西谷和希(にしやかずき)も敬愛してやまなかった。

 退団理由は家庭の事情という。6月に妻子が帰国し、単身生活が続いていた。プロとして契約解除の申し出はつらい判断だっただろう。くしくも新潟戦の前まで6戦負けなし。仲間の成長が彼の決断を促した、とも想像できる。

 クラブのツイッターに掲載されたビデオメッセージでペチュニクは「ありがとう」と繰り返し、サポーターも感謝の言葉で応えた。トータル約1年の在籍期間でマークしたゴール数8は突出したものではない。それでも背番号25は「栃木SCを救った男」として、数字以上の鮮烈な記憶をサポーターの心に残した。