岡田晴恵教授

岡田晴恵教授

 9月5日まで防災週間。災害時に注意が必要な感染症を知っておきたい。台風などによる水害の危険性が高まるこれからの時期に特に気を付けなければならないのが、がれきや土砂に潜む細菌が原因となる破傷風とレジオネラ肺炎。感染免疫学が専門の白鴎大教育学部の岡田晴恵(おかだはるえ)教授に予防策などを聞いた。

 破傷風とレジオネラ肺炎はいずれも重症化しやすく、命に関わる感染症。7月の西日本豪雨災害後は、広島県内で被災者2人が破傷風、1人がレジオネラ肺炎を発症した。

■破傷風  

 破傷風は、傷口から入った破傷風菌が毒素を作って運動神経機能を破壊する感染症。顎や首の筋肉のこわばり、飲み込みにくさなどが初期症状で、早期の治療開始が肝心だ。治療が遅れると、強いけいれん性の全身硬直から呼吸筋がまひし、死に至ることもある。致死率は3割。

 破傷風菌はどこの土壌にも存在し、熱や乾燥、消毒にも強い。わずかな傷口からも感染することがあるため、けがをしないようにすることが重要になる。

 「避難時や片付け作業の時は、肌が出ない服装で手袋を着用し、厚底の靴を履く。けがをした時は水できれいに泥を洗い流す。飲み水だけでなく、傷を洗うための水の確保も大切。洗浄後は外気に触れさせて、乾かす」と岡田教授。深い傷を負った時や口が開けにくい症状が出た場合は早急に受診する。

 唯一の予防策はワクチン接種。3種混合として定期接種になったのは1968年だが、81年より前は副作用などを恐れて接種を控えていた地域が多くあるとみられている。またワクチンの効果は10年ほどで低下するため、最近は30代での発症者も出ている。

 岡田教授は「まずは母子手帳で接種状況の確認を。接種していない人はもちろん、定期接種した人も約10年おきに打つことが理想的」と話す。

■レジオネラ肺炎

 レジオネラ肺炎の原因となるレジオネラ属菌は、土壌や川、池の水などに広く存在する。水害の後は土ぼこりや土砂を含んだ霧状のミスト(エアロゾル)とともに、菌を吸い込む恐れがある。

 一過性の熱(ポンティアック熱)で済む人もいるが、高齢者や抵抗力の弱い人は急速に重症化してレジオネラ肺炎になり、死亡することもある。潜伏期間は2~10日で、症状は高熱や吐き気、呼吸困難など。

 大事なのは、適切な治療薬の選択。通常の感染症ではセフェム系などの抗生物質が処方されやすいが、レジオネラ肺炎に有効なのはマクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質。適切な治療薬を使えば致死率は1割未満だが、そうでない場合は6、7割に上昇する。

 ワクチンはないため、予防策はレジオネラ属菌を吸い込まないこと。被災後の片付け作業などの際にはマスク、できれば防じんマスクをするのが一番だが、ない場合はタオルで鼻と口をできるだけ覆う。

 岡田教授は「災害直後は疲れがたまり抵抗力が落ちて感染リスクが高まる上に、医療体制が混乱し、傷を洗う水さえないこともある。平時からできる対策を」と呼び掛けている。