心を込め、商品の帯に点字を打つ上原さん。手前が「大谷の石畳」=9月上旬、鹿沼市中田町

 全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」の開幕まで29日で1カ月。視覚障害のある選手らにエールを送ろうと、鹿沼市中田町でチョコレート専門店を経営する上原晋(うえはらすすむ)さん(54)が、パッケージに点字のメッセージを付けたチョコを販売している。県アイバンクを通じて角膜移植を受け、菓子職人になる幼少期からの夢をかなえた。「選手たちに力を発揮してほしい」と願い、心を込めて点字を打つ。

 上原さんは群馬県生まれで、先天性の強度近視と診断された。眼鏡では矯正しきれず、学校では黒板の文字が読めずに苦労した。「運動は危険」と医師に禁止された。双子の兄は視力が良く、「なぜ自分だけ」とふさぎ込んだ。

 22歳の時、近視が治る手術に望みをかけた。しかし左目の角膜は濁り、視力をほとんど失った。頼りは右目の0・03の視力だけとなった。治療を諦め、身体障害者手帳を取得した。 

 マッサージ師を養成する都内の学校へ通い点字を学んだ。しかし飲食業への憧れが忘れられず、ファストフード店の社員となった。異動で本県へ移り住み、知人の勧めで獨協医大病院(壬生町)を受診し、出合ったのが県アイバンクだった。

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