迫田義博教授

 那須烏山市の大規模農場で、国内最多の殺処分頭数となる豚熱(CSF)の発生から6日で2週間。県は5日正午時点で、全約5万6千頭の28・8%に当たる1万6124頭を処分した。国による疫学調査は、広い農場と多くの関係者を調べなければならず、通常よりも長期化している。原因究明が注目される中、CSF研究の第一人者、北海道大大学院の迫田義博(さこだよしひろ)教授は取材に対し、「国内で確認された事例のほとんどは野生イノシシからの感染で、農場間の感染ではない」と説明。感染防止には個々の農場における対策の検証とレベル向上を唱えている。

 迫田教授は今回のケースも、農場近くまで野生イノシシが接近し、何らかの理由でウイルスが農場内に入ったとみている。

 2018年9月に岐阜県で豚熱が確認されて以降、国の方針で各都道府県は野生イノシシの検査をしている。本県も年間を通じて検査を進め、4月以降は83頭を調べたが、那須烏山市内での陽性個体は現時点で確認されていないという。

 獣医学の専門家は「地域の一つの集団で300頭ほど調べないと、陽性の個体は見つからない」と解説。陽性個体が発見されていなくても、感染したイノシシがいないという証明にはならないと指摘する。

 身近に潜在する可能性があるウイルス。侵入を防ぐためには「農場ごとに検証する必要がある」と迫田教授は訴える。適切な消毒や柵の設置、敷地周辺の草刈りといった鳥獣対策など、飼養衛生管理の基準は同じでも、農場の飼育頭数や環境によって対処は異なる。迫田教授は「(対処について)農場の人が理解し、毎日適切に行動しているか確認すべきだ」と指摘する。

 発症を防ぐためのワクチン接種では、本県は、抗体を調べる血液検査結果を基に、農家別に接種時期を助言するなど徹底している。

 子豚については、母親からの移行抗体が切れる期間があるため、県内では生後40日前後で接種が行われる場合が多いという。迫田教授は「30~40日で接種するのは基本だが、母親から受け継ぐ抗体が20日程度で切れる状況が起きている可能性が高い」とみる。その上で「各農場や担当の獣医師が飼育豚の免疫状況をよく把握し、まずは1回目の接種を適正な時期に実施するよう精度を高めていくことが重要だ」と指摘する。